烏丸メヰ

しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜の烏丸メヰのレビュー・感想・評価

1.5
謎の光によって超能力(?)を得てしまったしんちゃん。
その変化は同時に、報われない人生を懸命に過ごす一人の“非リア充”青年にも起きていた。
ある予言をなぞるように、町に大事件が勃発する。

上映当時、同世代で“幼い頃からクレヨンしんちゃんファンでありいまも映画版が好きな大人”の友人二人が『バラッド』並みにブチ切れていたのを記憶していた作品。

私は子供の頃クレヨンしんちゃんを多少観たことある程度(赤ちゃんの登場は知らない)ので、愛着面とか“作品あるある”みたいな原作知識面からの見解は持てない為、コメディ映画としてのシンプルな感想。

映画でも、深刻なモチーフを扱っていても忌憚なく「馬鹿馬鹿しいノリ」が出来る「クレヨンしんちゃん」という作品の強さと個性は健在(だからこそ後述の、監督の主張をしんちゃん世界を使って言わせる部分が残念に感じる)。
松坂桃李さんやお笑い芸人さん達の声の演技はとても合っていた。

元々、人物にかなりデフォルメの効いた平面的デザインの「しんちゃん」世界が3Dになっている映像面に関しては相性の良さは感じなかった。
これは、個人的に、クレヨンしんちゃん=ペタッとした絵柄、という印象しかないから受け入れられなかったのかも知れない。

ストーリー面は単純に地獄。
監督が「悪(に転落する)」としたものを、ステレオタイプな偏見で描いているのが気になる。
世相や生い立ちで苦しみ鬱屈した辛い世代への偏見がこれか、メッセージのツラで覆った「上から説教」がこれか、しかもそれをクレヨンしんちゃんの世界とキャラクターに言わせて“いい話”加工したのか、それを悪役として幼児と子持ちという「幸せな層」に見せて何がしたかったのか?というのがとにかく鼻につく。

映画公開時にスクリーンを出た親や、これを配信やテレビ放送で子供と観た親が
「あんなお兄ちゃんみたいになっちゃうから、頑張らないとダメだよ~」
とか子供に言うみたいな地獄と偏見の再生産、恵まれない世代や生い立ちの人間の“不幸ポルノの教訓消費”が起きない事をひたすら望む。
烏丸メヰ

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