2024年公開宮崎駿監督作。事前に一切の情報開示もなしに公開された異色作。
本作は宮崎駿監督の１０年ぶりの新作ですが…いやはや、とんでもないものをお出しになってきました。私感を述べさせてもらうなら、宮崎監督の作品は監督の個性とエンターテイメント性のバランスがよく取れていると思っていたのです。しかしそれは逆に言えば、監督自身の個性を強くは押し出せていない、人が見れる程度に薄めることができる。良識人ですね、と思っていたのです…今までは。本作は宮崎監督の底力を垣間見れる作品です。エゴ、美意識、人生観、そういったものがごっそり押し込まれている。情報量が多すぎて、一度観たぐらいではおそらく、すべてを理解できない。できていない。あまりにも多い情報を、奇麗な、美しい映像で叩きつけられる訳です。それも、今までの宮崎アニメでは見たことのない表現の映像で。凄いことですよこれ。
けど、エグくないんですよね。何というか、スッと入ってくるんです。説教がましくないからかもしれません。他の（特にヨーロッパ映画とかでありますけど）心象表現を主とする映画にありがちな、独りよがりな映画ではない。観ていてキツい、と思う作品ではないです。最低限のエンタメ性が入っている感じです。ただし、読み込むには相応の知識と経験が必要にも感じます。
…ウイスキーでトワイス・アップという飲み方があります。ウイスキーに少しだけ水を足して、ウイスキーの香りを引き出すという飲み方です。本作はそんな作品。ただし元はシングルカスク、度数は高いのでご注意を。決して皆でわいわい観る、という作品ではありません。しかし（特に惑星ソラリスやノスタルジアが好きなような）映画好きな人には刺さる作品でしょう。
