藍色

君たちはどう生きるかの藍色のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ジブリ映画のセルフオマージュがたっぷりで、まさに宮崎駿映画の集大成を飾る作品なんだなという気がした。

まず冒頭の、病院の火事のシーン。
「風立ちぬ」の震災のシーンや「ハウルの動く城」の戦争のシーンを思わせる雰囲気。黒く焦げてまだ火のついた灰?みたいなものの動きがリアルだった。こうやって延焼っておこるんだな。母の病院に向かうシーンの、周りの人達がぼやけて崩れた輪郭になるのも眞人のパニックになった心情を表してて好きな表現だ。

火災から母の実家がある田舎に引っ越すシーン。ここら辺の、夏子さんの言葉遣いとかは「失われてしまった古き良き日本の美しさや気品が好きな80代男性にウケそう…って気がする。

眞人の家は戦争のお陰で景気よくやってるが、他の人は戦争のせいで貧しい日々を過ごしてるわけなので何とも言えないギャップがあるよなあ。

砂糖をお土産に持ってったときに、おばあちゃんが「あるところにはあるんだねえ」って言ってたのほんとそれ。ここにいるおばあちゃん達、それぞれのビジュアルが個性的で、どことなく湯ばーばや術が解けた荒地の魔女っぽさもあり好き。眞人の家の豪邸はさながら千と千尋の世界みたい。襖絵が豪華。

妻が死別した後にその妹と結婚するの、当時のことを考えればわかるけど、父と母の妹との間に生々しい肉体関係があり、眞人は否が応でもそれに気づかずにはいられないポジションなの居心地悪いよな…。

そんな折、大叔父が建てた不思議な塔からやってきた青鷺が「お前の母は本当は死んでいない」と塔の中の世界へと誘う。

ここで青鷺が何で眞人を呼びに来たのかイマイチわからない。大叔父が作った世界を継がせるため?でも大叔父が青鷺に指示して呼ばせたわけでは無さそうだったし。

眞人は青鷺の誘いを断るし、怪しい鳥だから仕留めようと弓矢を作るの強い。眞人が強くて行動力があるキャラなのがいいな。学校で地元の子と喧嘩になった帰り道、自分で自分の頭を石で殴って相当出血したのも思い切りがある…。あれは学校に行かない口実を作るためだったのかな?

でも結局、妊娠中の夏子さんが塔の中に入ってしまい、夏子さんを取り戻すために眞人は塔の中の世界へと入る。ここで一緒に来てくれたキリコさん、この映画の中で一番好きなキャラだ。若い頃はカッコよくて男まさりな姉御、歳をとってからのおばあちゃんの姿もコミカルで好き。

塔の中の世界がまた、ザ・ジブリワールドみたいな絵本のようなファンタジー世界なんだなぁ。

眞人はキリコさんと一緒に、いずれ人間の魂となるわらわらがいる世界に行く。ここの世界では、ペリカンがわらわらを食べてしまう…けどペリカンもわらわら以外に食うものがない…という葛藤がくり広げられている。キリコさんが住んでる家のタペストリー、ナウシカみを感じるなあ。

キリコさんと別れた眞人は、夏子さんを探すうちに、肉食インコに食われそうになる。そこでヒミさんに助けられ、一緒に夏子さんを探しに行く。ヒミさんは、かつてとうに迷い込んだ時の、過去の眞人の母だった。ヒミさんが出してくれたジャムトースト、美味しそう!ジブリ飯だ。

夏子さんは石の産屋の中にいて、子供を産むまで出られない?石が夏子さんを出そうとしないのが何故かよくわからなかった…。意志を持つ石、ラピュタっぽさある。夏子さんが、「あんたなんか嫌い!どこかに行け!」って言ったのを、眞人を守るために遠ざけようとしてるんだとちゃんと眞人が汲み取れたのすごい。私は「やっぱそれが本心?!」と思ってしまった。甥とはいえ連れ子だし。

ここで眞人は「夏子母さん!」と呼び、新しい母への葛藤が解消されていく。

結局、眞人とヒミはインコに捕まる。青鷺が眞人を助け、2人でヒミを救いに行く。インコはヒミをたてに、世界の主人である大叔父に「世界をインコのものに」するために迫りに行った。

大叔父がおさめる世界はもうすぐ崩壊しそうで、血族である眞人にこの世界を託そうとしたが、断られる。事情を知らないインコ王が、世界のバランスを保ってる石を切ってしまい、世界は崩壊する。

崩壊する世界から、ヒミ、眞人、夏子、キリコは脱出しそれぞれの世界に帰っていく…。



全編通して絵が本当に綺麗だった。
でも作品に込められた深いメッセージ性、みたいなのを読み取るには話が概念的すぎるというか。
話の筋じゃなくて、そこに登場するメタファーや概念を読む話っぽいけどそこまではちゃんと読めなかった。

世界を安定させるための13個の石っていうのは、宮崎駿監督作品が13作なのに通じていそう?

宮崎駿ワールドは、だれに引き継がれることもなくここで塔は崩れて終わります。って感じなのかな?

原作の「君たちはどう生きるか」もかなり昔に読んだことがあるけど、この映画に通じるものがどこにあるのかイマイチわからず。

塔の世界=物語の世界。そこでの冒険は記憶からなくなってしまうものだけど、空想の世界を歩んでつかんだ精神的な成長を持って、現実世界に戻っていってほしい…みたいなお話なんだろうか。
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