ふじこ

ロックダウンのふじこのネタバレレビュー・内容・結末

ロックダウン(2016年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

"高校生活は720日 たったそれだけだ!"
"俺も毎日数えてたよ"
"502日目は280日目よりもマシだと思うか?"
あと238日を耐えられなかったブランドンと、同じように恐らく家では母親に虐待され、学校ではからかわれイジメの対象になっているジュリアン。
2人は限りなく似たような境遇だったのかも知れない。でもジュリアンは、"きっとそうだよ"と慰めでも言える子で、こんなところで死にたくない。写真撮影だってきちっとジャケットを着てくるし、それはいつか大人になった時に見返して"そう出来ていた高校生活だった"と思うためのものか、或いはまた一年をやり過ごせた自分なりのトロフィーか。
いつか、をまだ信じる事が出来たんじゃないかな。そこだけが彼らの違いだったんじゃないだろうか。

警察がやってきて、何か言わないと撃たれるぞ!と慌てるジュリアンに、ブランドンは 俺はもう死んでる と答える。
ダメだ、僕は君を殺させない と立て籠もっていたトイレから出て行って両手を上げるものの、すぐに銃を持って出て来たブランドンに首を振るだけで、止めてあげる事が出来なかった。
ただ何も言えなかったのか、もう彼を止める事が出来ないと思ったのか、止めない方が良いと思ったのか。
撃たれた方が楽なんだ、と泣きそうな顔で言うブランドンを、どうしてあげるのが良かったんだろう。

そして警察に保護され、傷の確認をされながら 今日は何日?と訊かれ、482日目 と答える。

わたしはもうとっくに大人だから、たったの720日!と思うのだけれど。
瞬く間に過ぎていったように思う子供時代も、子供だったわたしの感覚ではきっととても長かったんだろうな。

大人が知ったように"逃げるという選択もある"と言ったって、学校にも家にも逃げ場のない子供はどうしたら良いんだろう。
そして逃げた先にも絶望しかなかったら?もう二度と、普通の子のように生きられなかったら?両親が迷惑そうな顔で見たら?近所の人は学校にいかない子供をどう見る?その先は?
明日の事も分からないのに、世界が狭い子供にとっては"逃げるという選択"そのものが不安の塊なのかも。
そうやって足掻いた先が、おもちゃの銃で武装して、誰かに殺される為の遠回しな自殺だなんて。悲しすぎる。
ふじこ

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