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アンダーカレントのCUのレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
3.7
人生の途上では様々な問題に直面するけれど、その全てを解決できるわけではない。解決も正解も無く、悲しみや痛みだけを後に残すような問題も少なからずある。そうした問題に対して、人はどうしたら良いのか。

この作品ではそれらに対する解決や正解は提示されない。全くすっきりしない話ではあるけれど、ずっと心の中で生き続けるような悲しみや痛みには、実際、解決も正解もない。ただただ、それを抱えながら生きるしかない。

主人公のカナエも、失踪したカナエの夫も、突然現れた謎の男ホリも、解決も正解もない問題をずっと心の中に抱えながら生きている。それは1人1人の弱さでもある。

でも、タバコ屋の主人がホリに言う。「悲しみを1人で抱える必要は無い」。2人で共有した先に新しいことが起きるかもしれない、と。

弱さを開く、そして、誰かと互いの弱さを共有する。その先のことはわからないけれど、新しい展開が待っている可能性がある。

過去の悲しみや痛みは、出来れば消してしまいたい。けれど、消せないならば抱きしめるしかない。そしてそれは誰かと一緒に抱きしめたっていいのよ。

少しだけ心の傷を肯定されて、少しだけあたたかくなるような、そんな作品でした。

蛇足だけど、リリー・フランキー演じる探偵の山崎がとても良かった。胡散臭いけれど一角の人物である山崎の、「理解」に対するカナエへの問いが、この作品の大きな鍵となっているのだな。
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