DJLastChristmas

ゴッドランド/GODLANDのDJLastChristmasのレビュー・感想・評価

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
3.9
映画がメディアとして優れている点の一つに「行ったことのない土地を知れる」、つまり旅行や観光に近い側面があるけれども、この映画を観てから土地土地の美味しく安全な面だけをかいつまんで短期滞在する「観光」の功罪について考えてしまった。あるいは、難度の高い山に軽装備かつ知識もないまま登る末路を見た気がしてゾッとした。その土地を深く知ろうと願う時、この宣教師のように生半可な覚悟と準備で臨むと命すら危うくなる。

この映画はアイスランドの美しくも過酷な自然の二面性を丁寧に描写した、ランドスケープ映画であり、馬との旅という意味では18世紀後半のロードムービーとも言える。

鈍臭くて人間臭くて神を信じていない宣教師に向いてない宣教師が主人公なので、結構イライラしてしまう。資材の手入れを丁寧にするショットが複数回映されることからも分かるように、宣教師の唯一信頼できる側面は写真に対する態度であり、写真については真摯であり続ける。

当時大荷物であったピンホールカメラと現像のための機材をわざわざ馬で運び、時に自ら抱え、折に触れてレンズカバーを外して10秒間光を通す。写真に対する執念、文化的であろうとする精神に感動すら覚える。

宣教師らしく己の行いを償うような(宣教師は望んでいないだろうが)ラストもアイロニカルで秀逸。

動物も人もガンガン死ぬけどかわいい犬を殺さない良い犬映画。おすすめ。
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