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コヴェナント/約束の救出の傘籤のレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
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おーもしろかった。
2001年以降のアメリカ軍がアフガニスタンで行っていた対タリバンの軍事作戦を元としたフィクションなので、その是非については慎重にならざるを得ないのだけど、映画的な面白さ・出来の良さは間違いなくあるので、これ系が好きな人ならかなりおすすめです。

お話は、IDE(即席爆発物)の破壊および、その他大量の武器を隠し持っているタリバンの制圧を主目的としている特殊部隊がその在りかを追い、ついに見つけた武器庫を破壊。しかしタリバンに待ち伏せをされ、特殊部隊のチームはほぼ全滅。曹長であるジョン(ジェイク・ギレンホール)は部下でありアラブの言葉にも精通しているアーメッド(ダール・サリム)と共に敵の陣地から脱出を目指す、というもの。ちなみにこれが前半部分。

元々タリバン側であったアーメッドは家族をタリバンに殺されたことからアメリカ軍として志願し、部隊に加わっているので、その地のノウハウはしっかり理解しており、地形の把握、言語によるコミュニケーション、それぞれの文化の微妙な違い、さらには潜入捜査や偽装といった軍事作戦面で大活躍してくれる有能な人物。そんな彼とふたりで逃亡劇を始めるジョンでしたが敵の銃弾を受け早々に負傷。意識が朦朧とし歩くことも出来なくなってしまいます。ここでアーメッドは彼を抱え、『ロード・オブ・ザ・リング』におけるフロドを支えるサム並の献身さを発揮してなんとかかんとかアメリカ軍の基地まで連れ帰ることを試みるのでした。いやアーメッドの異常な体力もすごいんですが、その忍耐力も半端なく、なんでそこまでしてくれんの?ってくらい尽くしてくれます。ちとその献身ぶりに疑問を覚えるくらい。途中途中でタリバンに遭遇することも多々あり、それぞれの場面は緊迫感高め。それらをいかに乗り越えるかってところにこの映画の引きの部分があり、アクション性も担保されています。そしてこの映画、かなりばかすか人が死にます。下手にドラマチックにすることは無く、容赦ない銃撃戦と次々に出来上がる死骸の山が絵として圧倒的。なんつうかPTSDとか心配になります。いやむしろ主役のふたりが殺すことに躊躇が無さすぎて、PTSDの心配が”無さそう”なことの方が心配。特殊部隊はその名のとおり特殊な訓練を受けていて、殺すことの心的な負担を減らすなんらかの訓練も施されているのかもしれませんが、その冷徹さが(冷徹なものとほぼ描いていないからこそなおさら)恐えーなと。

また、軍人同士の会話とかは専門用語もちょこちょこ出てきますし(簡単な説明は画面の端っこに表示されます)、ハンドサインによる軍事作戦の進行などもあるので、かなりまっとうな「ミリタリー映画」です。そのため逆に言えばこの手の作品が苦手な人、興味のない人にとっては全面的にはおすすめしづらいなーとも正直思います。
ただ、敵から発見されたときの緊迫感や、それに瞬時に対応する身体性を発揮したアクション、その場にあるものを適当に活用するサバイバル術(『MASTERキートン』とか好きな人ならハマる部分かと)、そういう「動き」のあるシーンがどれもこれも迫力がありテンション上がります。

後半からは逆にジョンがアーメッドを救出するという話となり、これまたアクション要素強め。とはいえ後半になるほどアメリカ側の”英雄譚”的側面が強まっていく気もするので、そこら辺はちょっと気をつけて見るべきかなあとも思います。個人的には衛星ナビを使って敵の位置を把握したり、無線を傍受することで危機を回避したり、テクノロジーによって数の不利を凌いでいく展開は嗜好に刺さる部分でした。

戦争映画、ミリタリー映画ってやつは興味ない人、苦手な人にはそもそも紹介しづらいジャンルですし、アメリカ軍の英雄譚という側面が強い作品なので注釈が多めの感想となってしまいましたが、初めに言った通り映画としてはかなり面白い部類に入ります。あーでも音楽の使い方はやたらムードを盛り上げようとし過ぎだし、ずーっと流してるしで、もっと静かな方が好みだな。
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