傘籤

エルカミーノ: ブレイキング・バッド THE MOVIEの傘籤のレビュー・感想・評価

-
自分は『ブレイキング・バッド』をいままで観たすべてのドラマのなかで最高のドラマだと思っていて、その上で言いたいのは、この『エルカミーノ』という作品は文句の付けようの無い作品だったということだ。ジェシー・ピンクマンを演じるアーロン・ポールの演技は素晴らしすぎて泣けてくるくらいだし、何かしらを前に置いて遠近感を出すカットはビシッと決まっている。演出は緊張感に満ちており、しかし脚本の巧みさでストレスをかけすぎることなく、この”ブラックコメディ”への興味を高いレベルで維持し続ける。よく出来ている。本当に。ラスト付近におけるジェシーとウォルターがふたりで食事する場面なんかはすごく胸に来た。ドラマ本編終了後の物語と過去にあった出来事をカットバックさせながら、彼がたどってきた過酷に過ぎる、奇天烈に過ぎる、ブレイキング・バッドな半生をスリリングに見せ、なおかつ優しく祝福する。完璧な終わりを見せたドラマ本編は、本作をもってより輝きを放つものへと昇華した。

というのが、見終わっての感想。そしてこの感想は上記した通りあくまで「ドラマ本編を見ていて」それを「最高だと感じた」ような奴の感想だ。
なのでこの作品単体ではおそらく十全に面白さを理解することはできない。
フィルマークスで点数を付けることは無いけれど、たぶんドラマファンからしたら☆5の評価になるだろうし、そうではない人からすれば☆3くらいになるだろう。この映画は映画の時間内でジェシーに感情移入させようとは鼻から考えていない。ドラマ本編を観ていることを前提にしか作られていない。それが評価を分けている要因だ。
そういうファン向けのムービー。でもファンムービーとして切り捨てるにはあまりに惜しい、出来が良すぎて泣けてくるくらいの愛の込められた作品なんだよな。だからこの作品は私が愛さなければならないんだ(使命感)。
ありがとうブレイキング・バッド。さよならジェシー・ピンクマン。君の未来に幸多からんことを。
傘籤

傘籤