HAYATO

夜明けのすべてのHAYATOのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5
2024年57本目
第74回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品された作品
『そして、バトンは渡された』などで知られる作家・瀬尾まいこさん原作の同名小説を、『ケイコ 目を澄ませて』の三宅唱監督が映画化
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の松村北斗さん&上白石萌音さんコンビのW主演
月に1度、PMSのせいで苛立ちを抑えられなくなる藤沢は、ある日、会社の同僚の山添に怒りを爆発させてしまう。やる気が無いように見える山添だったが、実はパニック障害を抱え気力を失っていたのだ。理解のある職場の同僚たちに支えられながら、藤沢と山添の間に特別な友情が芽生えていく。
『アウトレイジ』シリーズの光石研さん、『ちょっと思い出しただけ』の渋川清彦さん、『ひらいて』の芋生悠さん、『silent』の藤間爽子さん、『コード・ブルー』シリーズのりょうさんらが共演。
メンタルヘルスを抱えた主人公2人と彼らを囲む人々の日常が優しいタッチで描かれており、ざらざらとした質感の映像と相まって、ノスタルジックで心地よい作品に仕上がっている。
主演2人の素晴らしい演技によって「PMS(月経前症候群)」や「パニック障害」への理解も増し、病状は千差万別で向き合い方も人それぞれであることを学んだ。
物語の舞台となる職場を「プラネタリウムを取り扱う会社」に設定することで、宇宙や星座の話と2人の主人公の様子を重ね合わせることができ、星々と同じように人間は少しずつ変わっていくことがじっくりと感じられる。
それほど起伏のある物語ではないものの、説明セリフに頼ることなく登場人物の心情を巧みに表現しているので、いくつものシーンが記憶に残った。
藤沢が山添の髪の毛を切ろうとして失敗し、山添が笑い出すシーンは、時にお節介にも見える行動が救いになることもあるということを示していて、人と人との交流の尊さを実感させられる。
山添が自転車を走らせるシーンは、『PERFECT DAYS』の役所広司さんを彷彿とさせるほど爽やかで美しい。
あらゆる点が絶妙なバランスで、思わず笑みがこぼれるユーモアも最高だ。
説教臭さが全くと言っていいほど皆無なので、何度も見聞きしたことのある「夜明け前が1番暗い」という格言に、これまでとは違った響きを与えてくれる感動的な作品だった。
個人的についこの前たまたまりょうさんを生でお見かけしたばかりだったので、本作で再びお目にかかることができて嬉しゅうございました。
HAYATO

HAYATO