さいとぅおんぶりー

Avalon アヴァロンのさいとぅおんぶりーのレビュー・感想・評価

Avalon アヴァロン(2000年製作の映画)
4.5
いつもの「虚構性」がテーマの作品で押井的映画文法を掴むと案外すんなり頭に入ってくるような内容、見せ方のディテールを変えてるだけなのに相変わらず凄く面白い。

好きなシーンは食べ物だけカラーにして生々しく音をたてて咀嚼する場面、仮想現実の世界で唯一の現実物が不快に見える様に見せる意図がかなりツボ。おそらくあの食事シーンの口元のクローズアップはシュヴァンクマエルの引用。
後半のセピアからカラーに変わる演出はタルコフスキーの「ストーカ」から着想を得てるし同じくタルコフスキーの「鏡」からの引用してカラー撮影を必ずしも現実や現在を規定するものとして使ってなかったのも印象深かった。
監督が「映画は引用だけで作る物」と言うようにオリジナリティの否定から生まれる強烈な作家性の高さに取り憑かれる人間が多いのも頷ける。

ポーランドで撮影してヘリ出したりエキストラ100人集めたり今回は撮影規模も凄かったんだけど撮りたい物に対してやはり予算が足りてない…。割と気になった点も多いし人に勧める事は決してないけど自分の中では間違いなく傑作SF作品。