JohnConstantine

ヴァチカンのエクソシストのJohnConstantineのレビュー・感想・評価

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)
3.6
ついに本作がAmazonで無料公開、ということで期待に胸を膨らませての鑑賞。
1986~2016年までチーフ・エクソシストを務めたガブリエーレ・アモルト神父の回顧録を基にしているとのこと。


まず冒頭の一件、悪魔憑きかと思われる男の家を訪れるアモルト神父。
男の口を使ってレギオンを名乗る悪魔に対して、聖ベネディクトのメダイを用いて悪魔憑きかどうかを判断、豚に取り憑けるかと挑発し見事に成功。まさしくイエスがゲラサ(ガダラ)で男を癒した奇跡と重なる。
アモルト神父を紹介するには十分なシーンだろう。

映画の始まり近くでは場面の転換に軽快なロックナンバーが使われており、重々しく格式ばった悪魔祓いに入り込んでいく中盤~後半とムードを対比させているように感じる。

そしてアモルト神父のキャラクター、神への信仰は堅く、しかしながら飄々として時におどけて見せるその人となりも限られたシーンで分かりやすく表現されている。
巨体を原付にちょこんと乗せて颯爽と移動する姿もちょっとクスッと来る。
そんなコミカルな振舞いでありながら、教皇直々に指名された実力ある主席祓魔師であり、だからこそ現実主義的でもある、といった彼の思考や立ち位置も分かりやすい。

メインの舞台は1987年、スペインはカスティーリャのサン・セバスチャン修道院。
1年前に夫を亡くしたジュリアが娘エイミー・息子ヘンリーを伴って、唯一の資産である修道院に滞在しに訪れるところから始まる。
やがてヘンリーが変調をきたし、アモルト神父に依頼が来る。これを悪魔憑きと判断したアモルトは地元の神父トマースを従えて悪魔祓いを始める。

アモルト神父の人物描写、ジュリアの一家の描写から異変までの前半はなかなか雰囲気が良い。これから何が起こるのか、アモルトはこの先の強大な敵にどのように立ち向かうのか期待させる。

ヘンリーが憑依されてから、お決まりの悪魔憑きシーンが連発されるわけだが、ヘンリーになされるメイクが良い。
獣人とでもいうか、小さな体躯になんともイイ線をついたメイク。

悪魔祓いは基本的に悪魔の名前を解明しなくてはならない。
しかし悪魔はそうそう簡単には名乗らない。
本作も当然ながらそのパターンで、アモルトとトマースはこの難敵の秘密が修道院の地下にあると探索する。
ここから話は中世の異端審問に繋がる。
実際には異端審問の名を借りた人権侵害・虐殺の原因は人間の愚かさ以外にないのだが、当地のキリスト教会/教界は15世紀末には悪魔に乗っ取られており、それをヴァチカンは封印したという。
伝説のエクソシストが向こうに回して戦うには十分な相手、である。

この辺までは単に個人的な弱さと信仰の堅さに収束しない面白みがあってかなり楽しめた。

しかしながらクライマックスの戦い、悪魔アスモデウスがヘンリーの身体から出てアモルトに入ってからの戦いは絵的にやや迫力に欠け、物足りなさを感じた。
せっかくの悪魔祓いキットももう少しクローズアップして、悪魔祓いの文言も強く押し出し、もっとグロテスクかつそれこそ悪魔的な絵が欲しかった。
正統派エクソシスト物で世界観や美術が良かったのでもう少しディテールに寄った絵でも良かったのでは。

少しサイバーなアクションもののように、やや綺麗にまとまってしまったのは残念といったところ。

しかしながらラッセル・クロウの演技は素晴らしく、前述したような人物造形を見事に演じており、イタリア訛りの英語もなかなかである。
ラッセル・クロウと言えば私は「ワールド・オブ・ライズ」の嫌味な上司や「アオラレ」の振り切った異常者が好きなのだが、本作を見てもやはり素晴らしい役者である。
他の役者陣も良かったと思う。

クライマックスの戦いをもっと迫力あるものにしてくれていれば4点をつけたい。
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