独特な雰囲気をもつ青年を下宿人として迎え入れた老夫人が、花形ダンサーとして活躍する姪を紹介したことにより、下宿人の裏の顔を刺激させてしまう。マリー・ベロック=ローンズの小説を映像化している、サスペンス映画。
19世紀末、霧のロンドンで発生した「切り裂きジャック」の事件を題材にしている作品。本作の公開当時、1927年度「下宿人」(アルフレッド・ヒッチコック監督)を皮切りに、すでに3本の映画が先行している。
同一原作のため、プロットは先行の作品と大同小異。下宿人となる長身の学者が、何となく怪しげな言動を取ることにより、周囲の人間の猜疑心を煽っていく。危機感が足りないヒロインに苛立ちを覚えるが、警察の捜査内容が錯綜していく感覚が面白い。
殺人鬼が静かに忍び寄ってくるホラー演出に、エポックメイキング的な面白さが凝縮されており、本作こそが見世物スラッシャーの礎と言っても過言ではない。女の「魔性」に狂わされた男の愛憎が、鮮明に描写されているところも印象に残る。