ミッシングのsappukeiのネタバレレビュー・内容・結末

過去作『空白』にも通じる「ある不幸の渦中にいる人とその周辺」の物語。
主人公を含めた主要人物は、無情で冷酷なまでに容赦なく絶望へと突き落とされる。同時にそれでも生きている限りは掴み得るかもしれない僅かな希望の光も描く。この辺の手綱捌きが上手い。
吉田監督の作品は物語に唐突な小ネタを放り込むことが多いが、今作もまた笑わせたいのか何なのか(というか本来なら笑いに繋がりそうな描写も、物語がシリアス過ぎてギリギリ笑えないように構成されている)要所要所でネタをブチ込んでいる。「虎舞竜」のシーンとかが顕著だけど、そういう細かいズレが物語自体の緊張と緩和に繋がっている印象。

石原さとみの文字通り全身全霊を捧げたような鬼気迫る熱演はもちろん凄まじいが、その側で彼女を見守る青木崇高の「普通」を保ちつつ、時折感情が溢れ出る演技も素晴らしい。
また中村倫也の善き人であろうとしながらもメディアの残酷性に絡め取られる感じもお見事。あと主人公の弟役を演じた森優作のあの何とも言えない感じの佇まいは唯一無二だと思う。