KANA

若き仕立屋の恋 Long versionのKANAのレビュー・感想・評価

若き仕立屋の恋 Long version(2004年製作の映画)
3.8

久しぶりにウォン・カーウァイ。

60年代香港。
仕立て屋の見習い青年チャン(チャン・チェン)はある日高級娼婦ホア(コン・リー)と出会い、虜になる。

直接より間接のほうが
裸より着衣のほうが
エロティック。

出会いの手つきは猥褻で妖艶。
この魔性の手の感触と彼女の放つ芳醇なフェロモンが一瞬にしてチャンの体じゅうに電流を走らせ、脳深くに刻ませたんだろう。

密かに聞いた他の男に抱かれる声。
それを工房で脳裏に甦らせながら、仕立てているドレスの中に手を忍ばせ恍惚とするホアのショットの切なさ愛おしさといったら…

チャイナドレスを艶かしく纏い、基本的にツンとお高くとまったホア。
曲線と流し目が魅惑的。
チマキを愛でるようにしっとりと巻く手つきも性的なことを想起しないほうがおかしい。
そして、ラストの落ちぶれた哀れな姿にこそ女優コン・リーの魅力を感じる。

「手じゃイヤ?」
その言葉だけでチャンのカラダにはまた電流が走ったことだろう。
別れの手つきには、ミステリアスな卑猥さとは真逆の優しさが宿っているようだった。

変態作品と紙一重のフェチ的観点もあるけれど、
ノスタルジックなセピア色、澱んだ空気感、薄汚れた路地裏、裸電球、スローモーション…等々のWKWマジックで感傷的な品を保っている。
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