混沌たる現代に、あえてミニマルに生きるかっこよさ、禅の精神みたいな日本的なオフビート感が海外の人に受けたのかな。
同じ1日を繰り返しているようで、ひとつとして同じ1日は無い。
一見物静かで美しい日常の風景に潜む、言いようのない情動を役所広司が見事に演じている。浮かび上がらないだけで、誰もが抱えている自分だけの世界と孤独。
この世界には、本当はたくさんの世界がある。つながっているように見えても、つながっていない世界がある
平山の究極の孤独が優しくみえるのは、彼が穏やかな日常の底で、本当はえもしれぬ孤独や傷と対峙して生きているからかもしれない。穏やかな波の下に渦巻く闇について想った。彼は生きる事を戦っている、そんなふうに感じた。役所さん以外考えられない。ヴィムベンダースの空気感ともマッチしていたし、こういうオフビートな芝居が真骨頂だなぁ。引き算の演出に脱帽。
結局何も分からないまま、終わっちゃうんだな
そうだとしても名前のつかないささいな断片を拾い集めているだけだとしても、世界をほんの少し知った気になって、ささやかな美しいものに出会えるかもしれないことに期待してしまう。たとえ満たされず終わったとしても、満たされるいつかを思って生きていくんだろう。
気持ちの良い合点のいく人生でなかったとしても。辻褄が合わなくても。疑問だらけで何も分からなくても。
映画のラスト、平山と一緒に泣いている自分がいた。溢れ出すのは、諦念とも後悔とも無常とも悔しさとも嬉しさとも微妙に違って。なんでだろう。なんでか分からない。言葉に出来ない、というありきたりな言葉がハマらない。言語化しようと思うほど遠ざかる。今まで生きてきたいろいろがないまぜになって、終わりに近づいていくこれからを想って、ぐちゃぐちゃで、現実の世界には綺麗に説明のつかないそんな涙もある。結末のある映画のような物語にもならない物語を生きていく。
飽きもせず、人生を補完するように映画を貪り食うのだが、言いようのない感情に言葉を失う現実世界でのあの感覚が、映画を超えることはない。それでもこんな映画に出会える瞬間を味わいたくて、映画を観るのをやめられない。
なんといってもヴィムベンダースは音楽の使い方が秀逸。カーオーディオを使った音楽の演出のアイデアが良くてワクワクした。選曲も最高!ルーリードのperfect daysはトレスポのサントラでもあったよね。
映画観た後にサントラかけながらドライブしたんだけど、みんなやるよね〜。朝日のあたる家サイコーすぎる。