Osamu

Dear Pyongyang ディア・ピョンヤンのOsamuのレビュー・感想・評価

4.2
朝鮮総連の活動家の父とそれを支える母に育てられた娘のドキュメンタリー。
監督である娘が撮る父母の姿からはお互いの愛情が感じられ、いつまでも眺めていたくなるような平和な気持ちにさせられる。
しかし、3人の内面は平和だと単純には言えなそうだ。娘は父が支持する思想に共感できず、矛盾を感じながら育った。

監督は自身の父親の本心を引き出す手段としてこの映画を作ったのではないか。自身と父親との間にカメラを挟めば、正面からは聞きにくいことを聞けるかもしれないし、父親も言いにくいことを言ってくれるかもしれない、と。
座椅子の背もたれ(?)に掛けた監督の素足が自身が回すカメラに映り込むシーンがある。何という姿勢で撮っているんだと笑ってしまったが、父の本心を引き出すための演出なのではないか。それは父娘の心の距離感も見える奇跡のショットでもある。

観客は娘である監督の本心も気になる。監督は被写体である父親から引き出そうとし、観客は、父から引き出されるものだけではなく、それを撮る監督の感情を目撃しようとする。そんな構造のドキュメンタリーだ。

家族の愛情あふれるやり取りに微笑みながら、父娘の感情の表出を見逃すまいとスクリーンを凝視させられる。
Osamu

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