【シャイニング・アンド・ザ・ダークネス】
本作は冒頭以下のナレーションで始まる。
「夢のような結末だった
彼らは教えてくれた
野球というゲームの素晴らしさを
スポーツという営みの尊さを
夢を…正夢に変えて」
この作品は、日本が誇るまごうことなき史上最高の『感動スポーツドキュメント』である。
だが、先の冒頭のナレーションを、こう読み替えてみて欲しい。
「夢のような結末だった
彼は教えてくれた
博打というゲームの凄まじさを
スポーツ賭博という営みの恐ろしさを
夢を…悪夢に変えて」
翔平と一平
シャイニング・アンド・ザ・ダークネス
そう、『感動スポーツドキュメント』である本作は、視点を変えて観たその瞬間、立ちどころに『実録クライムドキュメント』に変貌するのだ。
事実は小説より奇なり。
2024年5月14日(日本時間15日)、ロサンゼルス連邦地裁に出廷した水原一平被告。
その1年前、本作が劇場公開された時、一体この世の誰がこんな闇深いアナザーエンディングを予想出来たであろうか。
連日ニュースで報道される彼のやつれた面持ち。
そこからは全く想像もつかない1年2ヶ月前のありのままの彼の姿が、この作品には数多く映し出される。
私が視認した限り、彼は実に44ものシーンに登場していた。
侍ジャパンの輝かしいウイニング・ロードの裏で、前代未聞の犯罪に手を染めていたこの男は、一体どんな眼差しで仲間たちを見つめていたのか。
アマプラ見放題配信中の本作で、今一度ご確認頂きたい。
✤✤✤✤✤
①1m01s WBC優勝が決まったその時
歓喜の輪に加わろうと駆け寄る一平
②7m18s 栗山監督が訪れたロスの
エンジェルスタジアムのベンチ裏から
大谷と共に姿を現す一平
③28m08 BOSSのリュックを背負って
大谷と球場入りする後ろ姿の一平
④29m15s 大谷が初対面の周東に
挨拶する際に付き添う一平
⑤30m36s チーム内での選手挨拶時に
大谷の傍らに寄り添うマスク姿の一平
⑥35m10s 練習試合での大谷の本塁打の
直後にベンチで仲間と談笑する一平
⑦36m49s WBC初戦の直前栗山監督が
メンバーを鼓舞するシーンの一平
⑧37m37s 初戦先発の大谷が外野での
ルーティーン練習をする傍らで
ボールを渡す一平
⑨38m56s ヌートバーの好守備で
湧き上がるベンチで一緒に歓喜する一平
⑩47m10s 近藤のホームラン後ベンチの
奥に小さく映り込む一平
⑪54m23s オーストラリア戦前の円陣で
牧の掛け声に応える一平
⑫58m16s 戦線離脱した栗林の挨拶
シーンで彼のコメントをヌートバーに
通訳する一平
⑬1h01m20s イタリア戦前の栗山監督の
スタメン発表コメントをヌートバーに
通訳する一平
⑭1h02m55s 先発する大谷がグランドに
向かう際に彼と言葉を交わす一平
(台詞「ちょい早いぐらい」)
⑮1h03m28s 大谷のルーティン練習中に
携帯で動画を撮る一平
⑯1h03m43s ブルペンでの大谷の投球
練習を後ろから見守る一平
⑰1h04m58s ブルペンを出る大谷や
甲斐やカメラマンと笑顔でグータッチを
する一平
⑱1h05m31s 大谷出陣で声を掛ける一平
(台詞「いけます」)
⑲1h07m56s ベンチにて大谷のセイフティ
バント成功で歓声を上げる一平
⑳1h09m13s ホームランを打ってベンチに
帰ってきた岡本とハイタッチをする一平
㉑1h11m12s 大谷が打たれマウンドへ
交代を告げに行く栗山監督に付き添う
一平
㉒1h12m58s 村上のタイムリーでホームに
帰ってきた大谷とベンチでタッチを
する一平
㉓1h14m05s イタリアに勝利し栗山監督と
グータッチの際ほんのちょっと映り込む
一平
㉔1h14m20s 準決勝の地マイアミに
向かうべく空港のバスで選手たちと
移動する一平
㉕1h14m40s 飛行機内でヌートバーと
会話をする一平
㉖1h15m41s マイアミでの練習日に大谷と
共に栗山監督と会話をする一平
㉗1h31m00s メキシコに逆転を許し
意気消沈する仲間たちにベンチで
檄を飛ばす大谷を一瞥する一平
㉘1h32m23s 山川の犠牲フライで
1点差まで詰め寄った時ベンチに
ほんの少し映り込む一平
㉙1h39m00s 決勝戦前に準決勝の映像を
観てチームの皆とモチベーションを
高める一平
㉚1h40m19s 決勝の試合前に栗山監督の
コメントをヌードバーと聞く一平
㉛1h43m12s 試合直前の練習中に大谷と
トラウトの二人を記念撮影する一平
㉜1h45m59s ターナーに本塁打を
打たれた失投をベンチで悔やむ今永の
奥に映り込む一平
㉝1h46m41s 同点本塁打を打ちベンチに
戻ってきた村上とハイタッチをする一平
㉞1h48m40s 大勢がアメリカ打線を
打ち取って盛り上がるベンチでほんの
一瞬映り込む一平
㉟1h48m59s 打席の準備のため
ブルペンからベンチに戻ってきた大谷に
言葉をかける一平
㊱1h49m39s 外国人の主審に選手交代を
告げる栗山監督の通訳をする一平
㊲1h53m50s ベッツを併殺に打ち取った
大谷をベンチから見守る一平
㊳1h56m22s トラウトを渾身の
スイーパーで空振り三振に仕留めた
マウンドの大谷に駆け寄りチーム全員と
歓喜の瞬間を迎えた一平
㊴1h58m06s 選手達と同じチャンピオン
Tシャツ姿で栗山監督の胴上げを見守る
一平
㊵2h00m37s 岡本の本塁打に仲間達と
ベンチで歓喜する一平
㊶2h01m33s 源田の安打にベンチ内で
拍手する仲間の後ろを歩く一平
㊷2h03m21s 優勝の瞬間チーム全員が
ベンチから飛び出す姿を上空から
撮影された際に画角の真ん中に映り込む
一平
─ ─ ─
◆2h06m20s エンドロールに『チーム
スタッフ』として名前が刻まれた一平
(氏名標記のみ)
─ ─ ─
㊸2h09m23s 優勝の瞬間チーム全員が
ベンチから飛び出す姿を一塁側から
撮影された際にまたしても画角の
真ん中に映り込む一平
㊹2h09m30s 本作の真のラストシーンで
大谷に「俺のグローブは?」と
問いかけられ呆然とする一平
今だからこそ言える。
ラストシーンのあの大谷の一言と一平の反応は、ノンフィクション史上最高にキレッキレのブラックジョークだ。
もし本作が今劇場で公開されたならば、観客はこのラストシーンで、熱狂的な某関西球団のファンのようにこう野次を飛ばすことだろう。
「そいつがくすねて売る気や!」
✤✤✤✤✤
驚いたことに、我々映画ファンには馴染み深い映像製作会社『ライオンズゲート』が水原一平の物語をドラマ化する企画があるらしい。
いや、流石にそれは大谷に承諾されるまいと思うが…もしもそれが世に出るならば、本作はその作品の生々しさを際立たせる極上の資料映像になることだろう。
本作、未見の方は勿論、鑑賞済みの方も今一度そんな視点でリピート鑑賞してみては。
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