タキ

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のタキのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

最近見たスーシェ版のハロウィーン・パーティとはだいぶ違っていた(スーシェ版は細かな設定が違うところもあるが概ね原作小説通りとのこと)ケネス・ブラナー版ではそもそも遺産がらみの殺人ではなく、小さな子どもが殺されるという痛ましいシーンを無くし、子離れできない親たちが娘と息子の魂を殺してしまったという風にアレンジされていた。アリシア・ドレイクは失意の様子ではあったが事故死同様だったし、レオポルドの身体は死なずポワロから魂の救済の機会を与えられた。
嵐のベネチア、忌まわしい伝説のある古い屋敷、降霊会に集まるいわくつきの人々、全体に薄暗いが見えにくいというほどではなく、舞台装置が凝りに凝っていて、雰囲気は抜群にいい。
やはりポリコレを意識した作りで霊媒師レイノルズはアジア系、その助手ホランド兄妹が異母兄弟とはいえあまりに風貌が違っていてムリクリ感が漂う(兄がたぶんインド系)オリエント急行の時のポワロのような勢いがないのは引退してしまったというのもあるとはいえなんだかさみしい。やたら武闘派のジョージ(執事)だなと思ってたらまさかのボディガード(元警部)だし、ポワロを利用して再びベストセラー作家にノシ上がろうとしているオリヴァも傍観者ではない立ち位置でちょっと面白いなと思った反面、旧友からの裏切りのような一抹のさみしさも覚えたのだった。ベネチアの自宅に帰ったら生き生きと次の事件に乗り出してる風だしひとりでお元気なのはなによりだけどもなんだかちょっと物足りない。ベネチアのポワロ邸は風景重視なのか予算の都合なのかいつも屋上でそこもガッカリ。ポワロのポワロたるゆえんみたいな部分を暗黙の了解にしてしまうとせっかくの「らしさ」がなくなってしまう。オリエント急行の時の細かな設定を取り戻して欲しい。
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