カタパルトスープレックス

原子怪獣現わるのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

原子怪獣現わる(1953年製作の映画)
2.9
レイ・ハリーハウゼンが特撮監督として本格デビューした作品。翌年の『ゴジラ』(1954年)に大きな影響を与えたことで知られる。

テーマは『ゴジラ』に先駆けて「原爆の脅威」なのだと思います。広島への原爆投下(1945年)からまだ10年も経っていないのですが、映画の題材となるには十分な期間だったのでしょう。そして、この作品がなければゴジラも生まれなかったのだと思うと非常に感慨深いものがあります。

レイ・ハリーハウゼンの特撮技術は円谷英二に勝るとも劣らず。特撮映画としては現在でもとても興味深いものがあります。しかし、なぜ本作と比べて『ゴジラ』は現在まで人々の記憶に残っているのか?それはキャラクター造形にあると思います。

本作で登場するリドサウルスは恐竜なんですよね。空想の世界の「怪獣」というより、よりリアルな「恐竜」なんです。立ち位置としては『ジェラシック・パーク』(1990年)により近い。ジェラシック・パークもどれくらい恐竜をリアルに描けるかがポイントで、恐竜のキャラクター造形まではあまり考えられていない。

一方で、ゴジラはキャラクターがある。怪獣映画の先駆けと言える『キングコング』(1933年)により近い。あと、大きいのが個人技か団体技かですね。本作はレイ・ハリーハウゼンの才能に完全に寄りかかっています。しかし、『ゴジラ』の場合は円谷英二だけじゃなく、美術監督の渡辺明もいたし、監督の本多猪四郎もいた。チームプレイなんですよね。後年のウルトラマンも成田亮という天才的なデザイナーがいてキャラクター造形ができたから後年まで残った。

レイ・ハリーハウゼンの技術はとても素晴らしいし、特撮映画として後年に残した功績も非常に高く評価されるものです。ただ、映画作品としての本作はやはり経年劣化していると言えます。