メンターム

ダンサー イン Parisのメンタームのレビュー・感想・評価

ダンサー イン Paris(2022年製作の映画)
4.3
バレエ映画かと思ったら、ほぼ「コンテンポラリーダンス映画」といっても差し支えないほど、地を掴むコンテンポラリーダンスを軸にした映画だった。風、地面、感情、といった生々しい感覚を掘り起こすコンテは、怪我でバレエ人生を降りざるをえなくなったエリーズの痛みや暗い感情、幼い頃から体内に刷り込まれている踊りへの衝動をすべてエネルギーに変えていく。
基準の美を目指し天の方向へ指向するクラシックバレエと、地へ、内へと指向するコンテは極めて対照的なジャンルではあるが、手先の動きだけで見せるオープニングに象徴されるように、どちらも身体を用いて感情を表現であることに変わりはない。その違いは他者の物語なのか、自分の物語なのか、という点だけなのかもしれない。

バレエ出身のダンサーはコンテで「バレエっぽさ=美しい動き」を無意識にやってしまい、最初はその癖を脱却するのが大変だと聞くが、主人公を務めたマリオン・バルボーはコンテの中にいても一際目を引く素晴らしい動きで、彼女は本当にダンサーだと恐れ入る気持ちだった。