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ほかげのWNTのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
3.9
半焼けになった小さな居酒屋で身売りをして生きる女の元に行き場を失った男の子と青年が毎晩訪ねてくるようになる。

戦争に何もかも壊されたそれぞれの絶望。
女目線で進むストーリーは辛く悲しいもので、少し希望を抱いてしまった後の過酷な現実が耐えられなくて胸が痛む。

それぞれ毎日生きることが大変で、その日を必死に暮らしていることが伝わってくる。
多くを語らなくても心に癒えない傷を負い、その傷口が突然開いて誰も止められなくなる恐ろしさをひしひしと感じた。

互いの名前を知ることもなく、過去を詳しく話すこともない。
言わなくても辛い経験をしていることは皆共通していて、身を寄せ合って暮らし生き延びることが求められる時代だったのだと感じた。

戦争に心を蝕まれ生きていくということ。
後半の兵隊さんと坊やのシーンが心に残っている。

趣里の演技と雰囲気作りが素晴らしくてこのような役が上手い。
坊やの目力や訴えかける力が凄まじい。
ほぼ居酒屋の中で進むストーリーで登場人物が少ないけれどそこが良くて魅力的な映画だった。
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