MikkoIchitani

悪は存在しないのMikkoIchitaniのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.8
カメラの位置が印象的だった。 深い森の中で遠くから人々を捉える視点はどこか超越した存在を感じさせる。ドライブレコーダー? もしくは車体に取り付けられた簡素なカメラのぶれ感が現実の息遣いを伝えるような、とても不思議で違和感のある画面。

濱口監督ならではの独特な台詞回しや顔の割れていない役者選びも相まって、過度な共感を生まずに淡々と物語をただ俯瞰して見つめるような感覚だった。何が起きてもただ見つめるだけ。人間によって作られた善悪の感情を無に帰せしめる、神聖さをまとった風景と音楽が印象的な作品。