みぞみぞ

悪は存在しないのみぞみぞのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

すごい。圧倒的だ。


杜撰なグランピング事業に伴う軋轢の描写を中心点として、ここまで普遍的な真理にたどり着くまで描写を紐付け拡張し掘り下げるというのは、間違いなくセンスと努力の賜物だな。同じことをやろうとする人はごまんといるが、ここまでやれない。シンプルな実力。

水は上流から下流に流れるという話が、
最後、親から子の話に繋がっていく流れ震えたなぁ。
劇中常に達観的ポジションを保っているように見えた主人公すら、
子の面倒を怠るという汚水を流していて、その汚水は我が子に深刻な影響を及ぼし、その結果としてやはりこの世界のバランスを危ぶむものとなりえるのだという。
主人公の立場の輪郭がブレを見せた瞬間、真に"悪は存在しない"というタイトルが効いてくる。

そしてグランピング予定地での手負いの鹿との対峙で、全てが繋がり、バランスが決定的に崩壊する。
極限の緊張状態で、主人公は純然たる邪魔者と成り果てた彼を羽交い締めにし、怪我をおった娘を抱き抱えその場を走り去る。

スゴすぎる。

なんかこのバランスが取れてる時間と崩れてる時間がどんどん移り変わる感じ、ギヨームブラックみも強くて好きだったな。
今までの濱口竜介作品で1番好きだった。

あとそもそも、オープニングがイケすぎてて、その時点でにやけてしまったな。
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