"手負の鹿は人を襲う"
"都会の人はストレスを吐き捨てにここに来る"
濱口竜介作品は2作ほどしか観ていないのだが、いずれも文学的で難解な印象を持って、濱口竜介の作家性を決め付けていた。しかし、それもどうやら早とちりだったようで、今作はやけに素直に面白い。先の台詞はいずれも、のちに起こる展開を予見していて、台詞と映像とが呼応している点でも非常に分かりやすく、受け入れやすい。
"男と女と一台の車があれば映画は撮れる"
このゴダールの有名な言葉がまた頭をよぎる。実は『ドライブマイカー』を観た時も感想の中で引用したのが、ゴダールのこの言葉だった。冒頭のタイトルを見れば一目瞭然、今作は前作よりももっと直接的にゴダールが引用されている。キレの良い編集とぶつ切りの音楽がいかにもで、ああ、ゴダールは時代と海を越えてここに辿り着いたんだな。と感慨に耽っていた。
2024/04/30 1回目