トールキン

悪は存在しないのトールキンのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.2
これほど咀嚼や解釈に苦しむ作品はなかなか無い。そして理解が追いつかない。エンドロールは一瞬で終わり余韻に浸る間もなく劇場を後にし、家路に着いてる最中もずっとモヤモヤが頭から離れない。恐らくそういった要素がこの作品の魅力の要因の一つに違いないと思う。さらに色んな考察などを含めてそのモヤモヤが段々と頭の中で病みつきになるかのような感覚になっていく。
つい聴き入ってしまうような音楽、それが急にピタッと止み静寂に包まれるかのような演出や、あらゆる引きの絵のシーンでボーッと傍観するかのように見入ってしまう描写、それを映し出すカメラアングル、リアルな会話劇など、これらもまた最大の魅力だと思う。

説明会のシーンでは正に一触即発って感じで客観的に見ていてめちゃくちゃハラハラドキドキした。「俺らの住んでるところにこんなもん作んじゃねーよ」みたいな、最初は住民側に肩入れするようなかたちで見ていたし、住民の主張することは当然理解出来るし100%それが正しいとも分かる。段々と説明しに来たあの2人の表情が歪んでいってその場の緊張感も増していくも良く出来た演出だと思う。あんなボコボコにされたらあの2人に流石に同情してしまうし、彼らも仕事で上からの命令に従ってやらされてるだけなんだな、と思うとかなり居た堪れなくなるし、見方を変えれば彼らも「悪」とは言えない。てか目先の利益しか考えずにそんな仕事を押し付ける芸能事務所の社長が「悪」そのものなんじゃないん?て風に思ってしまう。

そして、衝撃的なラストが本当に衝撃だった。え?終わり?何で?って感じで。最初にも書いたけど、ただその不可解さ、モヤモヤさがとても良いポイントだったりする。鑑賞後にネットで色んなレビューを拝見すると色んな考察などが書かれており、正解は一つではなく色んなカタチの答えがあるんだろうなあと思えるし見た方と詳しく語りたい。

あと、余談だけど、こんな言い方したら人として器ちっちゃとか思われそうだけど、主人公の言動にちょっとイラッとしたのは自分だけだろうか。何でタメ口なん?とか、人の好意を邪険に扱ったりとか、住民の立場という当事者からすればそういう態度も当然ということかもしれないが。
後々考えたらそれすらも伏線なのかな?と思ったりもしたけれど。
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