いぬちゃん

ビニールハウスのいぬちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

ビニールハウス(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

半地下はまだマシらしいんですが、
ストーリーとしては
半地下(パラサイト)の方が面白さと気持ち悪さはありました。

この映画はとにかく残酷です。
主人公は自分で大切なものを全て壊してしまいます。それも全部偶然。
主人公が介護していた患者のファオクは、お風呂で転倒して亡くなります。その時、息子から少年院を出たら、一緒に住みたいと電話がかかります。息子と住みたいと思った主人公は、警察への電話を辞め、ファオクの遺体を隠し、代わりに認知症の母を一緒に住ませます。しかし、一家心身が起き、母も亡くなります。たまたま少年院から出てきた息子が母親の居ないビニールハウスに侵入し、隠れていたところ、母親が帰ってきてビニールハウスを燃やし…

また、間接的ではありますが、主人公はスンナムに先生に暴力されていると相談された時、口が滑って殺せば?と言ってしまい、スンナムは本当に殺してしまいます。実行したのはスンナムとはいえ、先生まで壊してしまいます。。
これでもかという残酷な話のまま映画は終わります。私はファオクが他人と入れ替わっていた!とをテガンの友達が知るシーンまでみたかったですね。。

テガンがまた優しい盲目おじいちゃんなんで、余計にしんどいのです。。
テガンの妻のファオクは認知症を患っており、言動が凶暴なのですが、テガンは妻に嫌なこと言われてませんか?と気遣われたり、あなたにはとても感謝していますと信頼を得られている存在でした。
だからこそ、ファオクの遺体を隠したことが、とてもしんどいし…余計に真実を言えなくなる。。

テガンは、ファオクが他人と入れ替わっていることにいち早く気がつくのですが、同時に認知症の初期だと医師から判断されていたので、私は妻も分からなくなったんだ!と思い悩みます。認知症初期だと判断された際に、既に死のうとは思っていたみたいですが、妻が分からなくなったと同時にショックが押し寄せ、それが引き金となり、一家心中が起こってしまいます。これもとてもしんどい。。
分からなくなってないし、むしろ合ってるし、救いであるはずの友達が、ちゃんとファオクかどうか確かめてくれなかったし…でとてもむずむずしていました。。

主人公とテガンは段々嫌な方向に動いていく訳ですが、そうなった理由がちゃんとあって、それがとても強い反動になって、行動に移っていく、ここが丁寧につくられていました。

全体的に所々説明がないので、そこはマイナスポイントでした。
意図的に説明を省いて、考察が進む映画がありますが、これはどっちかというと時間なくて説明できてないように思いました。。なんとなく。
ビニールハウスに住んでいる理由、夫の話、息子の話、スンナムの先生の話など…

ビニールハウスに住んでいる理由は恐らく、夫のDV(?)から避難するため、ビニールハウスに住めるようにしたのだと思われます。その後、劣悪な家庭環境から息子がグレて、犯行を起こすようになり、少年院に入れられたのだと思われます。その間もお金がなく、ビニールハウスに住み込みに、、と想像します。

テガン役のヤン・ジェソンさん、本当に盲目の方に見えた…演技力が素晴らしいです。。
主人公ムンジョン役のキム・ソヒョンさん、息子と住む新しい家で、涙を流すシーンがあり、それがもう役として自分の心から反応しているような涙に見えて…すごく良かったです。
息子と住める嬉しさ、これから墓場まで持っていかなきゃ行けない秘密を抱える苦しさ、何故自分はこんなことをしているのだろうという自分への情けなさが混じったような涙でした。