いぬちゃん

オッペンハイマーのいぬちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

予習しておけばよかった( ; ; )
背景知らないと分からない映画です…
さっき解説動画見てきました笑

レビューに何回も見て味わう映画とありますが、まさにその通りで、これはもう一回観たいですね笑
クリストファー・ノーラン監督の映画は初めて見たのですが、この監督の作品自体が数回見ることを前提にしているとか。まさにそうでした。
1回目はちょっとみるのがキツいんですが、じわじわとあれはなんだったんだろうと追求したくなる余韻が残ります。不思議ですね。

内容は難しくて理解し難いところが多いのですが、演出は特に印象的でした。
まず、足踏みのシーンと爆発する音。音がはっきりと大きく鳴り、怖い。何か不穏なものを感じました。
足踏みは何回か出てきます。
恐らくオッペンハイマーの不安を表しているのだと思います。

あと、原爆を落とした後のオッペンハイマーのスピーチ。会場の客の肌がただれていたり、足元には黒焦げの人がいる…という演出。オッペンハイマーの原爆を産み出し、人を殺めてしまったという罪悪感を感じました。

あとは白黒とカラー映像の演出。
白黒はストローズの公聴会、カラーはオッペンハイマーの聴聞会のシーンと分けられているようです。
これは、表と裏みたいなことを表しているのではと思っています。オッペンハイマーの聴聞会はストローズが妬みで仕掛けたものです。
(聴聞会では、ソ連のスパイの容疑をかけられ、検事などに問い詰められる。原爆開発の時代の出来事が明るみに出る。不埒な女性関係なども)
そして、その聴聞会の裏でストローズは何をしていたのか、そういったことを公にする公聴会がありました。
まさに表と裏。表の明るみに出る場面はカラーで、その裏は白黒といったところでしょうか。

結果、オッペンハイマーは休職処分になります。しかし、科学に誠実である人柄が好感を呼び、多くの科学者たちが名誉回復をのぞみ…オッペンハイマーは科学で偉大な業績を残した人として、フェルミ賞を受賞します。
一方、裏の顔が明るみになったストローズはキャリアを失います。
何事にも誠実であることが大事だと、改めて思わされました。

オッペンハイマーは原爆をつくった人だから、別に極悪人ではなくて、純粋に科学を突き詰め、計算と実験を繰り返し…同胞のユダヤ人を助けるため、懸命に努力を続けた。(研究を辞めたら暗殺される恐れもあったので尚更なんですが…)
何も変わらない、ただまっすぐ自分の仕事を全うした普通の科学者でした。
しかし、彼自身も殺戮兵器になることは分かっていて、それでも時代には逆らえず…苦しい毎日を過ごしていました。
威力の高い原爆を落とせば、今後、それ以上のものを作る気なんか無くなるだろうと、幻想と自分を正当化しながら。。
しかし、そんな理想は訪れることなく…原爆よりも威力の高い水爆の時代へ…
オッペンハイマーは水爆反対と核の縮小を訴える活動を始めます。本当に科学に誠実な人なのだと思いました。

科学というのは、人を殺せる学問であり、一方で人の生活を豊かにする学問でもある。科学の集大成が殺戮兵器になるなんて悲しすぎる。
より良い方向に科学を利用できる世の中になればいいなと思います。

原爆が落とされて、喜んでいるアメリカ人を見て日本人として複雑な想いもありましたが、皆が皆、喜んだわけではないはず。時代の流れと政治が大きく関わり、仕方ないところもある。
もし逆の立場だったら? 当時の日本人は喜んでいたかもしれません。皆が戦争を深く理解し、平和な社会をつくれるよう、心持ちを高く生きていきたいですね。