KH

雪山の絆のKHのレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
4.2
2024年の年間ノルマ70本中4作品目。
観させて頂きました。

Netflixオリジナルで新作ともなると、普通にアニメを観ていてもオススメされるので、
なんとなくぼーっとそれを観てて速攻でクリップした様な感じです。

また、見る前からかなりのしんどさは覚悟の上でしたが、
それでもやはり『うーん、今日じゃあないな』と敬遠したりしておりましたが、この度決心して見ようと試みた次第であります。

まずは、ネタバレなしの率直な感想をば述べたいと思います。


『凄まじい作品でした。また、予備情報として予め知っていたので言いますと、この作品は実際に起こった実話を元にしています。
しかし、こんなにもフィクションであってくれと願った事があるだろうかと、頭を抱えてしまうほどでした。
それ程までに過酷で、この世の全ての地獄を鍋で煮詰めて目の前に出されている気分でした。それは作品が酷いという訳ではなく、
これが現実なんて事を受け入れられないという衝撃に苛まれたような感覚です。
兎に角、スナック感覚では決して見れない作品なので、非常にお勧めできる作品なのは
いうまでもなく、ただ安易に手を出さない方が良いとだけ言っておきます。しかしながら非常に素晴らしい作品なのはいうまでもありません。』


またここよりネタバレを含む感想になりますので、まだ観てない方はご注意を、


まず、冒頭に文字だけで情報が駆け抜けていくので、こちらの方で調べた実際の事件に関しての情報を載せます。

この『雪山の絆』という作品の舞台は

『ウルグアイ空軍機571便遭難事故』という事件を扱っており、

1972年10月13日にウルグアイ空軍の571便機がアンデス山脈に墜落した航空事故です。

乗員乗客45人のうち29人が死亡したが、
16人は72日間に及ぶ雪山でのサバイバル生活の末に生還する。

また、乗客はステラ・マリス学園 のラグビーチーム『オールド・クリスティアンス』
の選手団とその家族や知人を合わせた一行40人が、
チリのサンティアゴでの試合に向かう途中で事故に遭います。

事故の発生原因とされているのは、悪天候によるルートの変更。
メンドーサから直接アンデス山脈を超えてサンディエゴまで飛行する事が不可能だった為に、
作中でも少し説明のあった、山脈に沿って飛行機は南下し、山脈の切れ目を西に通過して、そのまま北上してチリに向かう予定だったが、

コースが雲で覆われていた為に
パイロットは標準的な通過時間を計算することで西から北に方向を変えるタイミングを図ったが、実際には、強い向かい風で機体が減速していたため、山脈の切れ目を抜けるには通常よりも長く時間がかかるはずだった。
そのため、山脈の西側に十分に達していないうちに北上を開始した。
山々を深く覆う雲の中に突入して間もなく、1度目の衝突をした。

チリとアルゼンチンの国境にまたがる高度4,200メートルの地点だった。
吹き飛んだ右翼で垂直尾翼が切り取られ、胴体後部に穴が空いた。

別の峰との次の衝突で左翼もなくなり、
機体はただの空を飛ぶ胴体だけとなった。
機体は、飛んできたプロペラによって切り裂かれたのちに、地面に衝突し、険しい崖を滑落して最終的に雪に埋まって停止した。

また機体の尾部は多くの荷物を積んだまま胴体とは分離して別の場所へ滑落した。
乗客3人と乗員2人が機外に放り出され、
この時には9人が即死し、
負傷が元で初日中に3人が死亡した。

この情報は殆どwikiから引っ張ってきたものを軽くまとめたものではありますが、
続きを見ても分かる通り、この作品が全くの誇張なしの情報から作られた作品だと言うのが兎に角受けた印象と衝撃でした。

実際にかなりの乗客がこの時の衝撃で足を骨折したり、生き残った医大生が飛行機の支柱で添木を作ったなど、作中では描けてない情報がまだまだ出てくるので、気になる人はぜひその辺も履修していただければと思います。

むしろ作品として人が見れるものにする様に
ちょっとだけ優しく作ってさえいると思えるほどです。実際はこの作品の何倍も過酷な状況だったに違いなく、実際に人肉を処理する、食すシーンなんかはかなりオブラートに包まれて見せてくれた様に思う。

また、この出来事は本当にあり得ないくらいに奇跡として世界中からの注目を浴びる反面、
やはり生存者が死者の人肉で飢えを凌いでいたことをめぐり物議を醸すことにもなる。

日本にも『ひかりごけ』なる小説があるが、それも戦果の極限状況にて、仲間の肉を食べて生きながらえると言う作品がある様に、

食べなければ、死ぬ訳で、

死んだら、それで終わりなのだ。

僕が同じ状況になったらどうするだろうか。なったことも想像も出来ないですが、
多分彼らと同じ事をすると思うし、それを納得するのだと思います。

ラストに助かった彼らが、全員が寄り添う様にこの苦悩を共有するかの様に、ベッドルームで固まっているシーンは本当に涙が溢れてくると言うか、
世間は奇跡奇跡と湧き立つもの、
彼らの脳裏にあるのは、自分たちが飢えからも寒さからも解放された喜びを享受出来ているのは仲間の死の上に成り立ってしまっている事の事実。

それらと折り合いがまだついていない様に思う。
また彼は救助の直後に、機内に残っていたチーズを食べながら生き延びていたと語ってはいたが、家族に内密ではあるが、遺体を食べて生き延びた事を公にしようと相談していた。

しかし、後日談ではあるが、救助隊のリークにより彼らが人肉食をしていた事実が、サンディエゴの新聞の一面トップとなった。
内容は無論、かなりセンセーショナルなもので反響はかなりのものであった。

批判する者、擁護する者、キリスト教の解釈でも議論は分かれたが、

救助隊員は、墜落地点から800メートルほど離れた地点に死者の遺体を埋め、
石を積み重ね、中心に鉄製の十字架を建てた。機体内に残っていた遺体の残骸は野次馬による損壊を防ぐために焼却処分された。


おそらくは、未だに結論の出てない問題。
感じる人によっては、当事者でないものが
この問題を議論する資格を要しているのかもわからないが、

やはり、極限状態になった状況で迫られたこの2択を
この先も一生考え続けなれけばならないと思う。

そんな余韻が未だに映画を見ただけの僕の頭の中をぐるぐると回っており、
でも、多分、俺の家族が同じ状況になった場合は、俺は自分の体を家族に与えたいと思うだろう。
また、亡くなったものたちも同様だと思いたい。

まだまだ語りたいことはあるけど、今回はこの辺にします。

wikiでは、時系列が日にちごとにまとめられており、さらに詳細が色々と書いてありますので、こちらも合わせてお勧めします。
KH

KH