かすとり体力

アメリカン・フィクションのかすとり体力のレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.8
アカデミー脚色賞で話題となった本作、タイトルやアートワークから「おもしろ映画」の匂いがプンプンしていて気になっていたところ、いきなりのアマプラ配信。すぐさま鑑賞。

おう!期待通りにおもろいやんか!

社会的テーマを絡めたシニカルなコメディーということで、『ドント・ルック・アップ』あたりのノリに近い。

まずもってコメディー映画としてしっかり面白いし、それが小難しいシニカル一辺倒ではなく、主人公モンクの自我と家族の物語という非常に個人的な物語に落とし込まれている点がユニーク。
(コメディーパートはガチで笑えるし)

「黒人とは弱者だ」というカテゴライズの仕方自体に違和感を覚えているモンクが、「え~~いそこまで言うんだったら社会の黒人イメージに仮託しまくった小説書いてやんよ!」と半ばヤケクソで書いた小説が大ヒットしてしまい、、、

というこの粗筋の時点でもうおもろい!

いわゆる「逆差別」問題だと思うんだけれど、そういう意味ではジョーダン・ピール監督『ゲット・アウト』と近しいテーマ設定。

(「黒人は素晴らしい!」「黒人は弱いから助けてあげないと!」じゃなくて、「黒人は」という主語の立て方やめろって・・・なお話)

いやはやこれ、非常に普遍性の高い、だからこそ我々も日本社会として解決策を立てられていないテーマですよな。。

既に社会的に不均衡があり、社会的に不利益を被るような立場に貶められている属性がある場合、その属性を「主語」で括らないと対応策が打ちにくい反面、

主語を立てた時点で、我々の脳はリソースを省エネするためにその属性を一括りでカテゴライズし、個々の個性を捨象しようとしちゃうもんな。

私はビジネスマンとして、やはり最近の潮流から想起するのは「女性活躍推進」に係る問題。

明らかに、日本の社会制度上女性に不利な構造があるからこそ、現在日本では「女性活躍」という概念で各種施策を推進していこうとしているんだけれど、やはり人によっては「それは女性の優遇ではないのか?」「逆差別では?」と捉える向きもある。

この問題は、DE&Iの「E:Equity、公平性」(≠Equallity、平等性)の観念でクリアされてはいるが、これ、分かんない人には分かんないうえに、

私自身こういった議論になった際に「女性とは〇〇である」と暴力的な主語の立て方を無意識にしちゃってることもある気がする…。

まぁ、こういう話って百点満点の正解はまだ無いと思うので、まずは自身の中に潜む「無自覚な差別性、アンコンシャス・バイアス」に自覚的になることが大切で、そういった意味では本作などが映画として敷居の低い形でそういったことを伝えていくことが、とても重要なんだろうな。

最後なんか固い話になりましたが、純に面白い作品につき、お勧め。

フラットに楽しめるし、思索の呼び水として間口も深い。
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