Momo

HereのMomoのネタバレレビュー・内容・結末

Here(2023年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

森、草木、苔、スケールが異なるものを平等に行き来するのが気持ちいい。さらに顕微鏡を覗くと広がっている小宇宙(!)
ここじゃない離れた場所や昔の記憶を思うときの、地に足がつかない感覚、あの言葉で自分を引き戻そうとするシュテファンを抱きしめる。
この映画をひと繋ぎにしているスープを配るという行為の中には、小さなケアがいくつも存在していたと思う。それは野菜を腐らせないことのほかに、たとえば容器から溢れないように輪ゴムを十字に掛けてあげることだったり、一緒に食べるために鍋やマグに入れて温め直したり、あるいは誰かのためにまたつくることであったり。とりわけささやかな瞬間を捉えられてしまう真っ直ぐさ。バス・ドゥヴォス、光みたいな人だ。ミカエル・アースの映画のあの眩さにも似ていて、出会えて嬉しい監督再び…しみじみと嬉しいと思う。

森の中をふたりで歩くが、カメラはシュテファンだけを斜め後ろから追っていくショットはやけに艶があって、これはまるで恋をしてしまった人の視線なのよと私は思いました。

そして映画の終わらせかたが大変好みで高揚していたらエンドクレジットまで気持ち良くて、隙がない。隣のおじさんの腕を掴みそうになった。

彼の映画は文字を扱うのが上手。。
前列で観るのがおすすめです。

追記(20240206)
アフタートークにて 言語学的な事がよく取り上げられていた
歴史的な背景から複数の言語が混在しているベルギーでは、
必然的に初めて会話をする相手に対して理解を試す感覚を持つという話から、
ものに名前を付けて呼ぶ行為の両面性についての話
たとえばもしもわたしたちが植物の名前をすべて知っていたら森の歩き方はきっと変わるだろう / けれどそれは名前を付けた人間的な行為であり、名前を呼ぶ事はつまり自分とは切り離しているという事でもある / 呼び方を忘れたとき、あるいは呼ぶ必要がなくなったとき、生態の一部となり世界と一体になる
Momo

Momo