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リンダはチキンがたべたい!のnatsuoのレビュー・感想・評価

4.2
「パプリカチキンを味わいスクリーンを彩る」

全然知らなかった映画だが、久しぶりにインディーズ系映画が観たくて本作を鑑賞。フランス映画を嗜みたいお年頃だし🇫🇷

亡き父が幼い頃作ってくれたパプリカチキンの味が忘れられず、母(ポレット)につくってとねだるリンダ。ポレットはなんでも願いを叶えてあげると約束してしまったがためにリンダの願いを聞き入れるが、なんと今は街全体でストライキ中!それでも諦め切れないリンダとポレットは、生きた鶏を養鶏場から盗み出してしまう。警察とポレットの姉と養鶏場の一人息子とスイカ農家の男と...街中のたくさんの人を巻き込んだ親子は、はたしてパプリカチキンをつくれるのか!?


鮮やかな絵画的アニメとはちゃめちゃコメディが物語を彩り風変わりな楽しさを演出している。このアニメーションがとっても素敵で、各キャラクターを異なる彩色で描きまさに十人十色、多様性を象徴する。この物語に登場するキャラクターは皆それぞれの個性が豊かでありながら、とても等身大なので親しみやすい。その個々の色が共鳴し合い、フランス郊外の街(団地)を一つの画として鮮やかに彩られている。なんというか、この素敵な世界にずっと浸っていたいと思えるほど美しい。人物だけでなく、ひたすら暴れ回る鶏や、ポレットが亡き旦那からもらった指輪など、物語のキーとなるものも色がつけられ印象的に映る。とってもかわいらしい。アニメーションのモーションも素敵で、色と輪郭の躍動感、素描ながらも豊かな表情。ジャパニメーションとは全くの対照的でありながら、アニメとしての画力は一切劣らないつくり。親しみやすく見やすい、特に感情が起伏するわけでもないけどそれでいて退屈はしないといったいい塩梅で楽しい鑑賞体験だった。

ストーリー自体はそこまで語るようなことではないが、なかなかコメディが面白くて不覚にも笑ってしまった場面が多々。子供の自由さと大人の大変さはやっぱりどこの国も一緒ね(どっちについたらいいかわからないギリギリ10代男性の意見)。地に足がつきつつ現実離れしたおかしさも交えることでエンタメとしてかなりよかったのではないか。まあ薄いといえば薄いのだが...。


特に前情報も知らず勢いで乗り込んだにしてはいい作品に出会えた。滅多に見れないユニークなアニメーションと心温まる物語。とても気楽に観れるので、疲れた時に元気をもらいに観たいかもしれない。とりあえず今はチキンがたべたい!

2024.04.18

[字幕]
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