こなつ

青春18×2 君へと続く道のこなつのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.2
多くの人が世代を超えて感動する作品。18歳の頃の自分を思い出したり、30歳を過ぎて学生時代の恋心が無性に懐かしくなった頃の自分を思い出したり、年齢を重ねても心の奥底にある人それぞれのノスタルジーを呼び起こすような素敵な作品だった。

2006年の夏の台南。18歳のジミーは、日本人バックバッカーのアミとアルバイト先のカラオケで出会い、ひと夏の恋を経験する。それから18年過ぎた2024年の冬。人生に挫折した36歳のジミーは、日本で鈍行列車に乗り一人旅をしながらアミとの日々を回想する。ジミーが旅の果てに知るアミが隠していた本当の想いとは。

古風な街並みが美しく、夜市、旧盆を祝う幻想的なランタン祭り、日差しが眩しい夏の台南、ジミーが初めて見る日本の雪景色と旅の途中で出会う様々な人々との交流。台南と日本の対比が、初恋の記憶と人生の岐路に立たされた主人公の心をより鮮明に描き出している。

原作は台湾出身のジミー・ライによる紀行エッセイ「青春18X2 日本慢車流浪記」。台湾のプロデューサーの切望で、藤井道人監督の初めての国際プロジェクトとなった。

エッセイが出版される前の2014年に台湾のネット掲示板に投稿されていたジミーの旅行記のブログを見付けた。中国語だから内容は全くわからないのだが、写真が沢山載っていた。JRの「青春18きっぷ」の写真。きっぷには26.3.12(2014.3.12)、11,500円と印刷された日付と金額。文面のあちこちに出てくる亜美という文字。車窓から流れる景色と車内の様子。そして映画ラブレターのジャケ写。何枚か写るジミー本人の写真の姿が、ジミーを演じたシュー・グアンファンと重なって胸が熱くなる。

決して幻ではない等身大のジミーとアミをシュー・グアンファンと清原果耶が見事に演じていて素晴らしい。切なくて心に沁みる珠玉のラブストーリーだった。
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