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副王家の一族のメルのレビュー・感想・評価

副王家の一族(2007年製作の映画)
4.2
ルキノ・ヴィスコンティが映画化を望んだが当時は許可が下りずに、代わりに「山猫」を撮ったと言われている作品。

原作はフェデリコ・デ・ロベルトの「副王たち」だが、教会や政府への批判があからさまに描かれているという理由から80年近く闇に葬られていた。
撮影許可が下りなかった理由もそれが原因だと思われる。

シチリアの名門貴族ジャコモ・ウゼダ公爵と息子コンサルヴォの確執と、ガリバルディ率いる赤シャツ隊に占拠されイタリア統一までの激動の中、権力維持に必死になる貴族の姿を描いている。

場所も時代も衰退貴族というテーマも同じ「山猫」と比べられ色々な酷評もされている。

「山猫」の原作者は「副王たち」が出版された2年後に生まれているので、多分影響を受けていたと思われる。

因みに「山猫」でアラン・ドロン演じるタンクレディは「副王家…」にも出て来ている。

「山猫」は作り込まれた豪華絢爛さの中で、滅びゆく貴族の美学を美しく描いている。

一方、「副王家…」では財力も権力も一人占めしてきたジャコモが老境に入り死を怖れて祈祷師にすがる姿や、父に反抗し続けたコンサルヴォが段々父親に似て権力を握ろうとする等、リアルな人間模様が描かれている。

何と言ってもジャコモの顔がザ・イタリアンなのが良い。
コンサルヴォは「あしたのパスタはアルデンテ」の兄役アレッサンドロ・プレツィオージ。

「山猫」の様に美男美女は出て来ないが、その分ぐっと現実味を帯びていて、今では美術館や博物館になっている実際のウゼダ家の屋敷が撮影に使われているので、当時はきっとこんな感じだったのでは…と100年前のシチリアに思いを馳せてしまう。
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