強い

無名の強いのレビュー・感想・評価

無名(2023年製作の映画)
4.2
日中/太平洋戦争時のスパイ、いやスパイのスパイ、いやスパイのスパイのスパイ…として動いた男達の物語。

前半はこれ程までに自分の無知を恨んだことがないほど難解で、ある程度知ってる名前や年号が出てきてやっと何となぁく理解できるレベル。
後半にゆくにつれて、時系列や視点のスイッチがありそのおかげで話の全貌が見えてくる。この辺りから無知でも馬鹿でも話が見えてくる。

中国語を話す人物と日本語を話す人物が同席しているが、日本語には字幕がつかない。故に、中国語の耳が完成された直後の日本語が理解できない!日本語なのに文頭が即座に理解できないのが非常に大変だ。
字幕を追いつつ、中国語と日本語を同時に受け入れる脳味噌がないとかなりキツい。

ましてや、歴史的背景をろくに知らずに見ればなおさら知らない言葉や人物名に振り回されることだろう。さほど歴史に興味を持たずに生きてきた愚かな私では、言語のスイッチも大変だのに、状況把握すら大変だった。

……とは言っても、これは傑作である。

誰がスパイで誰が味方かなんて、実際のところ本当に分からない事だったのだろう。心のままに人を信じる事が正しかったり、正しくなかったりする世界で、一体どのように生きていくのが正解だったのか。戦争という何一つ正しく無いのに「信条を賭けて戦う」事の虚しさと悲しさをヒシヒシと感じる。
きっと感情的になればなるほどドツボにハマる事になるのだろう。ワン・イーボーの演技には度肝を抜かれた。

前半でバラバラだった時系列に新たな視点が加わり、まるでパズルのピースを嵌めていくかのように物語が出来て行く。多角的に見る事の大切さを説いている。
その騙し騙され犯し冒される、上流でありながら人間関係に惑わされる愚かさ。

ああ、ひどく胸打たれてしまった。
バディものと戦争、それから疑心暗鬼とスパイの日常、日本軍の酷さ。……まあそれも多角的に見れば、と言うことではあるのだけど。

時系列や行動を一度整理してからまた見たい!
強い

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