ShinMakita

無名のShinMakitaのレビュー・感想・評価

無名(2023年製作の映画)
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☆俺基準スコア:2.2
☆Filmarks基準スコア:3.3





1940年代初頭、上海。
汪兆銘政権の諜報機関で働く主任フーは、従兄弟であるタン部長の命を狙った女を処刑から救い、代わりに上海在住日本人要人リストを入手する。その後、貴族院の若い公爵が死亡する事件が発生し、諜報員イエが日本側諜報部の長・渡部の命で調査を開始。この調査に怯え始めたのが共産党工作員ジャン。ジャンはタン部長に国民党への転向を打診する。こうしてフーはジャンに面会し、転向の意思が本物かどうかを確かめるのだが…



「無名」




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*今回はネタバレなし。
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トニー・レオンとワン・イーボー、新旧スター俳優2人が競演するスパイノワール。ですけど、決してとっつきやすいスパイ映画ではありません。まずは1940年代の上海事情というのを知っていないと厳しいかと。租界のおかげで列強各国のスパイもいる中、中国側も三つに分裂しているという前提です。すなわち共産党・国民党(蒋介石・反共反日・重慶政府)・国民党(汪兆銘・反共・南京政府)の3つ。南京政府は日本の傀儡政権です。本作の男たちはこの南京政府の人間だから、帝国軍人・渡部の部下的ポジションなわけ。
背景が複雑な上、映画的構成が複雑なのも本作の特徴。アバンタイトルでこれから本編で起きる出来事をアットランダムに抽出して流すので、完全に混乱します。本編は基本的に話が一直線だけど、時折時制が変わったり、本筋とどう関わるのかわからないチャリンコ帝国陸軍部隊が描かれたりで、頭の整理がちょっと面倒くさいですよね。前半のシーンやカットを中盤の本編に当て嵌めて初めて脳内で一本の映画が完成するというパズルのような作品なんですなぁ。

とにかく疲れる映画なのは間違いなし。二度三度観て答え合わせがしたくなる類いのスパイスリラーですね。主要キャラのうち、渡部だけが本音を言ってる気がするほど、みんな嘘つき。それがスパイ映画の醍醐味と言えばそうだけど…同じ舞台背景の映画なら、俺は「サタデーフィクション」の方が好みかな。しかし主演2人の色気は凄いよ、確かに。
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