あおは

陰陽師0のあおはのネタバレレビュー・内容・結末

陰陽師0(2024年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

世界観がとっても楽しかった。
日本版のハリーポッターのような。
でもはじまりはアトラクションのようなナレーションが入り、かなり説明的。もちろんしっかり説明してくれるから入りやすいというのもあるけれど、聞き取るのに集中力を割くから没入感が薄れ世界観が少し遠ざかるような感覚があった。

平安時代に陰陽師が実在し今も残っていることや、安倍晴明の名前などは知っていたけれど、細かいところまでは知らなかったから、陰陽師への好奇心でまず楽しめた。

陰陽師が使うのは呪(しゅ)という催眠術のようなもの。
人は見たいものを見て聞きたいことを聞く。現代的に言うと確証バイアス的なことなのかな。
だから事実は1つだとしても真実は人の数だけある。
そういった人間の特性を利用して催眠をかけ、本当は違うのにそうであるかのように見せかけるのが呪の本質。
呪だけでなく、人生のすべては人間の意識が創り出しているもので、どういった心持ちで生きるか、心の置き所1つで変わるのだろうなとも感じた。

平安の映像美や森の中での清らかな笛の音。感性豊かに楽しませるところもこの作品の魅力の1つだと思った。

また青く舞う平安アクションも独特でかなり見所。『キングダム』のような派手さはないけれど、しなやかで繊細な動きをする晴明のアクションは見応えあった。

今作では晴明と博雅を中心に据えて、平安の都で起こる謎を解き明かしていき、そのなかでの2人の掛け合いがとてもおもしろかった。他の学生と比べてまったく出世に対する興味や欲がない晴明と貴族なのにどこか抜けている博雅のコンビ。博雅に関しては少し安っぽいかなとも思ったけれど、晴明の無機質さと合わさればちょうどいい感じ。
学生と貴族で身分は貴族のほうが圧倒的に上なのに、出会ってすぐに晴明が上という力関係が構築されているのもおもしろかった。

しかしやはりどこか博雅に乗り切れなかった。博雅というより、博雅と徽子の恋模様に乗り切れなかった。自分に平安時代の知識があまりなかったのも原因だけれど、文の決まりがよく分からず、まずそこが乗れなかった。
男性が女性に文を贈るというところまでは知っていたのだけれど、一度開けたら断れないというところが分からなかった。そういう決まりだったのかもしれないけれど、2人の運命に関する重大なところなのに設定が後から加えられた感じで冷めてしまった。
そんなことを考えていたら徽子が泣き始め感情的になっていたから、映画が自分の感情を通り越していったような感覚があった。
ここをもっと丁寧に描いてほしかったなというのが個人的なところです。

また森の中で博雅が笛を吹くことで晴明を助け、それがとても重大な意味を持ってくるわけだから、笛を吹くだけで幸せになれるという博雅の特性を事前に伏線として描いておいてくれたら、ここでの感動が倍増したかなとと思った。

待ち望んでいた呪術は最後のほうで登場。
火の龍が突っ込んできて髪を下ろした晴明がまぁかっこいいこと。

「できますよ。少なくとも私には」

これのための『陰陽師0』だったのかと納得。

安倍晴明が帝の陰陽師になるのだろうけれど、続編があるのかどうか。
やるならば観たい。
あおは

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