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ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスターのogiharaのレビュー・感想・評価

4.5
試写会にて再鑑賞。
ざっくり言えば女性の主体性を扱う映画で間違いないし、その意味でアクチュアルな映画なのだが、正確な表現ではない。
試写会OPトークにて小川紗良さんが、作中での「女性の主体性」の表現が押し付けがましくない、という旨の指摘をしていた。自分も概ね同意だが、そう感じる理由はおそらく、作中で表現されているのが、じつのところ「女性の」主体性ではなく、「動物的欲求に従う個人の」主体性だからではないだろうか。
エイダに私たちが感動するのは、家父長的な新郎に抗してピアノと娘にのみ心を許す毅然とした女性の姿ではないはずだ。自らのほとんどを象徴していたはずのピアノと最も大切な存在であるはずの娘をそばにおいてもなお満たされない欲求に従い、当初淫売の対象にもされたはずのベインズのもとへと駆け寄るエイダ。そのような、理性ではどうにもならない感情の発露に動かされる人間の姿にこそ、強く心を打たれるのだ。
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