デニロ

死刑台のメロディ 4K リマスター・英語版のデニロのレビュー・感想・評価

3.5
1970年製作。脚本ジュリアーノ・モンタルド 、ファブリツィオ・オノフリ。監督ジュリアーノ・モンタルド。1975年に『狼どもの報酬』という作品と一緒に文芸坐で観ている。その狼どもにどんな報酬が与えられたのか全く思い出せない。尤も本作にしたってジョーン・バエズの歌っていた「勝利への賛歌」しか覚えていないんだけど。

1920年アメリカ合衆国/マサチューセッツ州。サッコ・ヴァンゼッティ事件をモデルにした作品。イタリアでの事件かと記憶していた。アナーキストで英語もロクに話せないイタリア人移民なんかはアメリカの大金持ちにとっては邪魔で仕方がないから大きく膨れ上がる前に芽を摘んでしまえ、というような問答無用の裁判劇。ここ数ヶ月の間、中東でも申し開きの場があるわけでもなく、そもそもそんな必要すらない人々に対して問答無用の殺戮が起こっている。女、子どもを皆殺しにしてしまえば、この先に子どもが生まれいずることもなくなり、子どもが成長して戦闘員となって我々に戦いを挑むこともなくなる。世界中を敵に回しても自分たちの世界だけを守るにはこれしかないとでもいう様だ。人は人の上を歩くのだ。

本作の裁かれる人、原題に使われているサッコとバンゼッティも裁かれるようなことは何もしていない。アナキストとして活動しているだけだ。容疑のかかっている現金強盗とは無縁の人だ。ただ1917年のロシア革命以降、アメリカ合衆国の資本家にとっては今にも革命が海を越えて襲い掛かってくるように思えたのでしょうか。/♬起て飢えたる者よ 今ぞ日は近し/醒めよ我が同胞(はらから) 暁(あかつき)は来ぬ/暴虐の鎖 断つ日 旗は血に燃えて/海を隔てつ我等 腕(かいな)結びゆく♬/(インターナショナル/日本語歌詞/佐々木孝丸/佐野碩)本当に海を隔てていても連帯は固く結びついていて、暴虐の限りを尽くした資本家はロシアのニコライ二世やフランスのルイ16世の末路を思い、おお、怖ろしい、と身の毛がよだったことだろう。さて、あ奴らはいつレーニンになるかロベスピエールになるか分からん、殺ってしまえ。人間というものは、まだ出てきてもいない化け物に恐怖したときが一番過激に反応するものなのです。

それにしたって、

Here's to you, Nicola and Bart
rest forever within our hearts
The last and final moment is yours
that agony is your triumph
                 (作詞/Joan Baez)

ニコラとバートに乾杯
いつまでもわたしたちのこころに残る
最後の瞬間はあなた方のもの
その苦しみはあなた方の勝利

そんな風に歌いあげられてもふたりは浮かばれないと思うけど。

新宿武蔵野館 《エンニオ・モリコーネ特選上映Morricone Special Screening ×2》にて
デニロ

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