広島カップ

わが道の広島カップのレビュー・感想・評価

わが道(1974年製作の映画)
4.0
今から57年前の昭和41年(1966)に起きた事件を描いた作品。

青森から東京に出稼ぎに行った男(殿山泰司)が街で行き倒れ、身分を証明する物を持っていたにも関わらず身元不明者として扱われ解剖実験材料とされてしまったという身の毛もよだつ事件。
その妻(乙羽信子)が裁判を起こし当局を相手に真実を追求する。

夫の亡骸を受け取るため上京し、荼毘に伏される前に一目会いたいと釘打ちされた棺桶の蓋を開けてくれと妻が頼むと「いやそれはショッキングだから止めておいた方がいい」と言う病院関係者。それでも強引に頼み込みんでようやく対面する妻。
その時一瞬映った殿山泰司(夫)の顔を観客は一生忘れられないだろう。人はこんなに惨い事をすることができるのだろうかと皆思うし、殿山の顔と共に本作も一生忘れることは出来ないであろう。

これは何かの間違いで起きたわけではない。国家権力による横暴である。弱い立場にある人々に対するこうした仕打ちが今から約半世紀前にはまだ日本では行われていたのだ。

WBCや大谷翔平、なでしこJAPANの活躍などを目にするにつけ最近は日本人に生まれて良かったと単純に感じる事が多い私ですが、そんな最中に日本の暗部をエグった本作を観ると日本人である事に、あいすみませんという気持ちにさせられます。
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