華麗なる加齢臭

のど自慢の華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

のど自慢(1999年製作の映画)
4.6
【味噌汁的作品】
日本人好みの作品。あのNHKの長寿番組「のど自慢」舞台とし、出演者を描いた作品だが、それぞれの想いや背景が適度に描かれている。
出演者の一人に「寅さん」のコスチュームを身にまとった者がいるが、「男はつらいよ」シリーズ同様、登場人物は名もなき市井の民だが、誰もが人の好い良い人ばかりだ。
社会的成功者も、あるいは犯罪者も登場しない。登場するのは普通の市民や、売れない演歌歌手や転職を繰り返すなど、決して上手く生きているとは言えないが、かと言って絶望的な状況や孤独ではなく、繋がりを絶やしていない者たちの物語。
梅干しやお茶漬け、あるいは味噌汁の様に日本人にとっては、特別なご馳走ではないけど、口すると妙に安心する日常の味。そんな感覚の映画だ。

群馬県桐生市という人口10万人の地方都市が舞台であることもこの作品の空気感を作り出す大きな要素。大都会とな違い、地方都市の洗練されていない田舎さ、あるいは、地元での繋がりを大事にするマイルドヤンキー的感覚が、より作品を身近に感じさせるだろう。
もちろん舞台である「のど自慢」とういコンテンツもスタイリッシュや洗練さは縁遠い、でも暖かさがある普段着的な番組だ。

とても残念なことは、エンドロールの「上を向いて歩こう」だ。出演者がそれぞれ数小節ずつ歌うのだが、どうせであれば舞台の上のマイクで歌って欲しかった。同じ井筒監督作品である「ゲロッパ」のエンドロールが見ているだけでHappyに慣れたので、同様な撮り方にすればよかったのにと残念だった。