華麗なる加齢臭

山谷 やられたらやり返せの華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

山谷 やられたらやり返せ(1986年製作の映画)
4.8
【社会的弱者同士の争い】
幻のフィルム。札幌で開かれた上映会に参加。観客は、昔は社会運動家だったんだろうなぁと思える方々が10名程度だった。

熱いドキュメンタリーだ。ゲバ字、立て看板、ハンドマイクのアジ、そして男たちの憤怒が画面から粒子の様に体に刺さってくる。

バブル前夜の1980年代は、一億総中流と呼ばれていた。貧困が大きな社会問題でなかった証左だ。また地方と都市の格差も少なく、大方の国民はどこに住んでいても、それなりの「豊かさ」を享受した。
バブル時代の高揚感というか浮かれた愉悦とは違い、この時代は豊かになったことを実感していた。
そしてそれは、私が10代から20代半ばを過ごした時代だ。その安穏とした時代にも、怒りに満ちた男たちがいて、「闘争」という名の戦いを行ったことを鮮明に記憶させる、あるいは思い出させる強烈な映像だ。同時代を生きたものとして死ぬまでに見るべき映画。

さて、映画の中で、団交に積極的ではない土木会社の社長が、大勢の労務者たちに詰め寄られ、最後は小突かれながら土下座をする。理性や知性により論理的に議論を重ねるのではない。その姿は文化大革命時、紅衛兵の人民裁判を思い出させた。

そして、今は分からないが、あの時代の暴力団やヤクザは、在日朝鮮人や被差別部落民あるいは境界認知の人たちが大勢いた。組員たちも、もともとは社会的マイノリティだったかもしれない。流れ流れてお互い闘争する相手になったとすれば実に皮肉なことだ。