お兄様の男気によって暗雲に光が差し込むお話。
名家の一族だが父親の死で居た堪れなくなる母と末の節子。
心苦しくも慎ましく生きる二人。女性が生きる術も自由もない時代に、たらい回しにされ厄介者にされる姿は痛々しくやるせない気持ちにさせられた。
良吉はきっと人を見る目があり、人懐こい。その一方で、ある意味作中で誠実な者を視聴者側に示唆する存在なのだろう。兄に懐き、母に心を開き。
煙たがられた挙句、なかば追い出された形になっても、それでも別荘でふたりがふたりらしい佇まいでいたことが本作の印象的な場面である。
決して弱音を吐かずに運命を受け入れて根を張って生きようとしている。
初盆後、人としての在り方を説教した兄は、一族の過ちを悉く撃ち抜く。
かっこいい兄は、救世主さながらである。
しかし、視聴者側はいじけて拗ねる一族たちの気持ちも分からんでもないわけで。
きっと当時の視聴者たちもそれぞれの登場人物たちに自分を重ねて観たことだろう。
小津安二郎の作品はやっぱりこうでなくっちゃ。
