戦後から数年たった広島で、1人の女子生徒が原爆病で倒れる。それをきっかけに広島の人々が原爆投下直後のことを回想する話。
戦後から8年経った1953年の作品。
広島の被爆者たちがエキストラとして出演したということで、この時代にしかない現地のリアルと、反戦、反核への切実な想いを感じる作品だった。
作中では、被爆直後の広島の悲惨さや、その後も原爆症に悩ませられる人々の姿、また、被爆者に対する差別や理解の欠如などが描かれている。
『オッペンハイマー』と本作を比較して、「机上の論理」の世界と「現場」の断絶を見たような気がした。
「1度投下され、人類がこの威力を目の当たりにすれば、2度とは起こらないだろう。結果的に多くの人々の命を救うことになる。」
これは『オッペンハイマー』にもあったセリフだが、机上の論理の上だからこんな事が言えるし、原爆を落とす決定ができたのだろう。
アメリカは戦後、ABCCという組織を作り、広島で被爆者の診察を行った。
しかし、その目的はあくまで調査だったため、治療は行わなかったとのこと。
いかに当時のアメリカが日本人を人としてみていなかったかを自覚させられた。