三樹夫

コンドルの三樹夫のレビュー・感想・評価

コンドル(1975年製作の映画)
3.7
アメリカ文学史協会に勤めるロバート・レッドフォード。アメリカ文学史協会は世界中の書籍を分析するような団体らしい。職員は全員で10人以下の小さな団体だが、何故か表に怪しい男たちが見張っている。昼食を買いに協会の外に出たロバート・レッドフォード。丁度その時協会はサイレンサー付きの銃を持った男たちに襲撃され、ロバート・レッドフォード以外の職員は全員殺される。実はアメリカ文学史協会はCIAの偽装団体で、ロバート・レッドフォードの業務は世界中の探偵小説を読み分析して本部に報告することだった。一体何故アメリカ文学史協会は襲撃されたのか。陰謀に巻き込まれたロバート・レッドフォードのポリティカルサスペンスという映画。

THE70年代という雰囲気の映画で、ゆったり目のテンポ、BGMはジャズ、レトロな通信機器を強調し、広角レンズを使いドキュメンタリータッチな撮影も行われており、作品全体から70年代らしさを感じることができる。ただストーリー自体は70年代以降の洋画でもよくあるような陰謀ポリティカルサスペンスとなっており、逃げだしたロバート・レッドフォードは通りすがりの全くもってとばっちりなフェイ・ダナウェイを巻き込んで自分が狙われる理由を探るという、洋画で何本作られたか分からないような展開になっている。
BGMがジャズだったり撮影がいかにも70年代なので、映画から受ける印象は凄い70年代感があるが、これが編集がもっとテンポアップして、会話のやり取りにゴキゲンなギャグを挿入し、撮影もステディカムなどを使いカメラを動かせば、いかにも80年代という映画になると思う。これを90年代に作ったら『エネミー・オブ・アメリカ』みたいになると思う。まあ『エネミー・オブ・アメリカ』は『カンバセーション…盗聴…』だけど。ちなみにトニスコは『コンドル』が好きらしく、『スパイ・ゲーム』の企画をやろうと思った理由も『コンドル』に似てたからとのこと。

通信機器がかなり強調されており、今観るとレトロマシーンなのが70年代感を醸し出すアイテムであるのと同時に、ロバート・レッドフォードの重要な反撃アイテムとしても存在している。
アメリカ文学史協会でのロバート・レッドフォードの仕事は世界中の探偵小説を読むことで退屈な仕事らしいが、探偵小説を読んでたことで危機を脱するという、そういうオタク知識大勝利みたいなのの先取りでもある。
フェイ・ダナウェイは完全にとばっちりで巻き込まれた人で主人公の協力者になるという、後の作品で言うと『コマンドー』のシンディみたいなものだが、どう考えてもいい迷惑よね。
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