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喜劇 右むけェ左!の一のレビュー・感想・評価

喜劇 右むけェ左!(1970年製作の映画)
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無節操な東宝ナベプロ映画ではあるけども、戦中派の軍隊ノスタルジーを落ちこぼれサラリーマンの自衛隊体験入隊によって呼び起こさせるアイデアは面白い。犬塚弘演じる元軍人の窓際課長が、軍の闇資金の存在を知ってしまった自分を上官が殺そうとしていた(運良く犬塚は生き延びたが代わりに別の上官が爆死する)と知る展開は、さながら『軍旗はためく下に』的なへヴィさすら醸しているし、犬塚の存在感はそういう重さにも耐えうるのだ。しかし当然物語はマチャアキ、なべおさみ、小松政夫らに導かれて軽薄へと浮上していく。一方、戦争の傷を抱える犬塚だけは重みをもって落下傘で地上に降下する。自衛隊協力のもと撮影される訓練&演習シーンにインサートされる実際の記録映像は、明らかに過去の軍国主義を照射している。にもかかわらず、かつての占領地であるニューギニアの原住民に自社の下着を売りつけるという大オチには、それがブラックジョークだとしても唖然とさせられる。どうでもいいけど元プロ野球選手ジャイアント馬場のピッチングが見られるのは貴重な気がする。
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