Omizu

ひめゆりの塔のOmizuのレビュー・感想・評価

ひめゆりの塔(1953年製作の映画)
3.8
【1953年キネマ旬報日本映画ベストテン 第7位】
『武士道残酷物語』今井正監督、水木洋子脚本の作品。ひめゆり学徒隊の悲劇を描いた実話もので、1982年には同監督、同脚本によりリメイク版も製作された。

それこそ全編クライマックスと言っていいような迫力のある作品だった。戦争物ってあまり好きにはなれないし、本作も好きというわけではないが今井正らしい美学に溢れた良作だった。

今井正は色んなジャンルの作品を堅実に仕上げる職人監督という印象で、作家性はあまり感じない。本作をみてもやはりその印象は拭えなかった。彼らしい作風というのはあまり感じないが、全体としては高いクオリティにある。

看護師として、家政婦として扱われる彼女たちであり、全編爆発が絶えない作品ではあるが、悲壮感はあまり感じない。それは彼女たち自身のパワーもあるし、彼女たちを必死に支える教師たちのお陰でもある。

「なんとかして救いたい」と奮闘する教師たち、それに応えるような学徒隊の生徒たちが健気で仕方ない。

沖縄で起こった悲劇、それを今の時代まで繰り返してはいけない。そんな教訓溢れる作品である。今井正の端正で迫力ある演出、よく整理された脚本、リアリティーたっぷりに演じるキャストなどどれをとってもよく出来ている。
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