むさじー

僕と一緒に幾日かのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

僕と一緒に幾日か(1988年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

<“縛らない愛”で描く愛の深層>

大手スーパーの御曹司マルシャルは自閉症で、何事にも無関心、無感動で何を考えているのか分からない。政略結婚で結ばれた妻にも無関心で、妻の恋人を容認している。そんな彼が地方支店の視察に出向き、支店長宅の家政婦フランシーヌに恋してしまった。
翌日には市内にアパートを借りて彼女を招き男女の関係にはなるのだが、それ以上積極的にアプローチしていく様子はなくて同棲の域を出ない。更にフランシーヌの恋人フェルナンに会い、生活保護受給者で自分に自信が持てない気弱な彼に支店マネージャーの職を与えた。
一方のフランシーヌは、見た目は可愛いがアバズレ女。同じ貧民層のフェルナンとは語らずとも分かり合える仲だが、欲しい物を何でも買い与えてくれるマルシャルにも惹かれていく。しかし二人ともフランシーヌを束縛せず、嫉妬もしないという奇妙な三角関係が続いた。そこに割り込んだのがヤクザなカフェオーナーのロッキーで、彼は強引にフランシーヌを奪っていき、そのことで三角関係は崩れていく。
結局、フェルナンはロッキーに嫉妬して事件を起こし、二人の仲を気遣ったマルシャルが彼の罪を被るが、罪の意識を秘めたまま幸せになれるはずもなく二人は別れる。そしてフランシーヌはマルシャルの自己犠牲の愛に心打たれて、彼のもとに歩き出した。
恋愛のありようも愛情表現もフランス風。縛らずに自由な関係で愛したい男と、そんな男の愛し方に「愛されている確信」が持てない女の思いがすれ違って苦悩する、そんな「愛って何?」を描いている。ウィットに富んで滋味あふれる良作だと思うが、昔も今も日本では受けないようだ。
むさじー

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