タキ

JSAのタキのネタバレレビュー・内容・結末

JSA(2000年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

物語は現場に居合わせた人物がそれぞれ異なった供述をし、真相がわからなくなってしまう「羅生門スタイル」で描かれる。南北ともに事件をあやふやなまま終わらせたがっており、真相に近づきつつあるスイス軍将校ソフィーは事件の担当を下される。公にしないという約束でソフィーは韓国軍兵士スヒョク、北朝鮮軍中士ギョンピルから銃撃戦にいたる顛末を聞き出すのだが、ソフィーがなにげなく口にしたギョンピルとスヒョクの証言の違いがさらなる悲劇をもたらす。ギョンピルが上官を殺してまで命がけで守った命がふたつ(ソンシクはこの時点ではまだ生きているかもしれない)失われてしまった。知らないままで終わらさずあえて知らせる残酷さよ。同じ言葉を話す人々が無機質な38度線などというラインで分断され、国(国にいる家族や友人含む)と友情のあいだで気持ちは常に揺れ動く。この物語を美しい友情物語に落とし込むわけにはいかないという私たち日本人には想像もつかない苛烈な現実がきっとあるのだ。
パクチャヌク監督が初めて商業的に成功した作品とのことで、エモのツボを心得てる上手い構成。ソンガンホも本作が出世作らしい。たしかにこれはすごくいい役だ。地雷を自ら解除できるスキルの高さと銃を突きつけられ殺されそうになっても韓国軍兵士のふたりを庇い続けた心の広さにちょっと出来過ぎ感は否めないが、徴兵で2、3年ほどの実践経験のない若者があの日極限状態になりパニックを起こしてしまったこともおそらく実戦経験豊富な彼は理解していたのだと思う。イ・ヨンエが演じた韓国系スイス人のソフィーが父の母国に対してどういう思いがあったのか。ストーリーテラー的な立ち位置が主で彼女のバックボーンが見えてこなかったのが残念だった。
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