みーちゃん

砂の器のみーちゃんのレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
4.3
昭和だなぁ〜、インターネットもスマホもないから、のんびりしてるなぁ〜なんて思いながら見ていたら、編集の大胆さに驚いた。

後半の加藤嘉の父子旅のシークエンスは想定外の涙。信じられないほど号泣した。あの旅の一日一日、一歩一歩の重さをリアルに自分事として想像したからだと思う。丹波哲郎たちと緒形拳たちのセリフの量と、それに比例しないインパクトも実験的な感じがして興味深い。

犯行動機が明確に語られないのは正解。なぜなら、観客が考えるべきだから。当事者だって言語化するには年月を要するだろうし、誰かに「その気持ち分かる」って纏められたら絶対に嘘だと思う。

ただ、善良な三木は殺害されるべきではないし、想像を絶する苦難を乗り越えた和賀は殺人犯になるべきではない。だから、どうすれば悲劇を防ぐことができたのか?と考えると、この映画には、ちゃんとヒントがある。

例えば、三木夫妻に引き取られたにも関わらず、子どもが出て行ってしまった理由。今西刑事は幼少期からの放浪癖って総括してたけど、そうかな?三木巡査は父親を追ったと思っているかもしれないけど、そうかな?

立派に成長した暁には、何が何でも親子は対面したいのかな?父親は手紙に会いたいと書いたけど、それは物理的な意味だった?

センシティブな問題に、他者が自分の正義、価値観で介入したことが事件の発端だと思うが、介入すらしなければ、父子は行き倒れていただろうし、生き延びたとしても互いの生死さえ知る術がなく、簡単には言えない。そもそも個人の問題なのだろうか。社会の機能は?

ラストのクレジットにもある通り、ハンセン病に限らず、同じことは今も形を変えて続いてる。決して忘れないよう、直接、間接、色々な切り口、様々なジャンルでアップデートし続けなければ、日本映画は終わると思う。