みーちゃん

東京物語のみーちゃんのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.5
20代の頃、映画好きなら見なくてはいけないと思って観たが、当時は感想の述べようがなかった。初見から、監督はこの映画の親世代より、ずっと若い人なんだろな、と思っていたら(描き方が瑞々しいから)、改めて小津安二郎は60歳という若さで亡くなっていたのか。

本質的には先日観た"秋日和"と変わらないような気がするけれど、今の私はこちらの方が沁みた。

特に印象的なのは、原節子のアパートのファーストシーンを、彼女の部屋ではなく、隣人の女性の部屋から始めたこと。短いシーンながら赤ちゃんを抱えてワンオペっぽい。普通このシークエンスは、先ず原節子の部屋に到着して、その後で隣にお酒を借りに行く。その場面を入れ替えたり省略することで、安アパートの全ての部屋に、それぞれの暮らしがあるんだなって無意識のうちに心に刷り込まれる。このジャンプカットこそ、映画にしかできない表現だし、重要なディテール。それを、こんな小さなシーンに用いることに、愛と一貫性を感じる。

あと、お義理母さんの東山千栄子が布団の中で、あんなに嗚咽していたとは知らなかったな。原節子がいい人だって笠智衆との押し問答も。やはり沁みる。